インモラルな役も「あくまでもひとりの人間」 福士蒼汰が『湖の女たち』で演じた“考えない”芝居
毎回100点満点のお芝居を披露するよりも…
──演じるキャラクターとしても大森監督のやり方としても、今回は、これまでにない作品だったのではないでしょうか。 初めてで貴重な経験をさせていただきました。大森監督に言われて特に印象的だったのは、「技術はもうあるからいいんだよ」というお言葉でした。 僕はこれまで、お芝居が自分の「技術」とは思ってはいなかったので、まずは自分のお芝居を「技術」と言われたことが心に残りました。 言われてみれば、「演技」は演じる技術と書きますよね。これまでたくさんのエンタメ作品に出演させていただいたことで、「声色をこうしてみよう」とか「こういう動きをしてみるのはどうか」と「脳で考える」お芝居が自分の中で通常になっていましたが、今回は、「技術に頼るのではなく心を表して」と、何度も言っていただき、新しい道が拓けたように感じます。 それに、自分がもし観客だったら、毎回頭で考えて準備した100点満点のお芝居を披露するよりも、心で感じたお芝居を出していった方が面白くて人間味を感じるなと。心で感じたお芝居は、20点しか出せないことも、150点を出せることもある。でも、それが緩急になって、リアルな世界観に繋がるのではないでしょうか。 ──今作に出たことで、次の作品以降の道筋が見えてきた部分はありますか? そうですね。これまで出演させていただいたエンタメ作品だと、基本的にストーリーがわかりやすくてハッピーエンドのものが多かったのですが、心を描いている今作は、観る人によって感じ方や何が残るかが変わる作品だと思います。 今作のように、ハッピーエンドではないのかもしれないけれど、見た人によって捉え方がまったく異なる作品にもすごく興味があるので、また挑戦する機会があったらいいなと思っています。
相澤洋美