「今朝枕元で硬くなってた。まだあったかくて生きてるみたい」愛犬が死んだ!号泣すると思ったけど「悲しみはあとから襲ってくる」に共感の声【作者に聞く】
母からの連絡は、愛犬「たろう」の死だった。「今日の夕方にはお別れです」と書かれた文面を見て、急いで実家に帰る。そこには静かに息を引き取った「たろう」が眠っていた。姿を見たら、大号泣すると思っていたのに…?今回は、チャン・メイ(@masondixon402)さんの実話「今日の夕方にはお別れです。」を紹介するとともに制作の経緯など話を聞く。 【漫画】愛犬が死んだ⁉「今日の夕方にはお別れです。」 ■たろうの耳が臭い!動かないけれど、それはまるでいつものことのようで 「たろう、今朝、お母さんの枕元で硬くなってた。まだあったかくて、なんだか生きてるみたい」朝の7時、母からの連絡で愛犬が亡くなったことを知る。 お医者さんに宣告されたとおり、愛犬たろうは1カ月で天国に旅立ってしまった。雲ひとつない、夏の日。主人公は急いで実家に向かう。 玄関が開くといつも大喜びして出迎えてくれた「たろう」の姿はなく、リビングで布団に包まれ目を閉じていた。たろうを見た瞬間、大泣きするだろうと覚悟をして向かったはずが、その場に眠るたろうを見ると、涙ひとつも出てこない。 「寂しい」という感情を押し殺すために、何も感じないようにしているのだった。そして、たろうの生きた証を感じた瞬間、押し殺していた感情が「ぶわり」と沸き上がる――。 ■「日常のルーティンで、ふと思い出して涙する」悲しいときはタイムラグがあるところを描きたかった ――犬の話を描こうと思ったきっかけは何でしょうか? この漫画の通り、飼っていた犬が亡くなったのがきっかけでした。でも、もう少し正確に言うと、亡くなってすぐに描いたわけではなくて、数年経ってからふと「描きたいな」と思ったんです。寂しい気持ちが落ち着いたときだったのかもしれないです。 ――「悲しくても、涙が出ない状況がある」場面にすごく共感しました。本作を作るうえで、こだわったところを教えてください。 ありがとうございます、狙っていたところを見ていただいていてうれしいです。本当に気持ちが動くときって、きっとその出来事を目の当たりにしたときじゃなくて、もう少しタイムラグがあると思うんですよね。なんなら、その出来事とは全然関係ない日常的瞬間だと思っていて。 お風呂でリラックスしてたり、掃除とかのルーティンをこなしているときだったり、頭の中がすっきりして落ち着いたときに「ぶわーっと感情が入り込んでくるような」そんな感情の動き方を描ければ、すごくリアルで生々しい表現になるだろうなと思って描きました。 ――飼い犬の思い出を聞かせてください。 私が飼っていたのは、弁慶という名前のフレンチブルドックでした。名前とは裏腹に内弁慶な性格で散歩が嫌いだったので、家の中で家族が帰ってくるのをじーっと待っているような犬でした。漫画にもあるとおり、家族が帰ってくると玄関で大喜びしているのが一番かわいかったです。 ――同じように飼っていた家族を亡くした方からも共感の声が届いていますが、感想はいかがですか? 大切な犬や人を亡くすということって、もうほんとにほんとにこれ以上ないくらい悲しい出来事だと思います。その一方で、誰にでもやってくるごくごく自然な出来事でもあるので、悲しい悲しいとばかりは言ってられなくって。どうにかその悲しさと向き合う必要がある。 “日にち薬”という言葉がありますが、ただただ悲しい気持ちに浸って月日が経つのを待つのは、なんというか…とっても孤独じゃないですか。そんなとき、見たもの聞いたもの読んだものが、薬とは言えなくても栄養となって回復を助けてくれることもあると思うんですよね。Xを通して、私の漫画がどこかの誰かの助けになっていればうれしいなと思います。 ――そのほかにどのような漫画を描いていますか? 大体30ページくらいの読み切り漫画を描いています。マッチングアプリで出会った男女の話や、妊活に向き合い始める夫婦の話など、自分に起きた出来事を題材にした漫画が多いです。あ、でも最新でアップした、熱を出して修学旅行に行けなくなった高校生の話は完全にフィクションです(高校生だったのはもう十数年前なので…)。 取材協力:チャン・メイ(@masondixon402)