名前がゴチャる! 「ガンダム」作品でも特異なMS「アッグシリーズ」を整頓してみよう
アッグシリーズが表舞台に現れた理由とは
アッグシリーズが世に出ることになったのは、放送終了直後に日本サンライズ(当時)が発行した「機動戦士ガンダム 記録全集4」に掲載されたことがきっかけでした。この記録全集で未公開資料として、富野喜幸(現、富野由悠季)監督のラフデザインと、メカニックデザインの大河原邦男さんによるクリーンアップ画稿が掲載されます。 もっとも、この記録全集は一般の書店では販売されない通信販売専門の書籍だったことから、より一般的になったのはアニメ雑誌「アニメック第15号」(ラポート)に掲載されたことがきっかけでしょうか。ちょうど劇場版『機動戦士ガンダム』第1作目が公開される前の時期でした。 そこから数年、アッグシリーズは幻の存在としてファンの記憶からも徐々に消えていきます。ところが、ふたたびスポットライトが当たる時がやって来ました。それが「ガンプラ」、いわゆるガンダムのプラモデルとしてです。 これには、とある事情がありました。空前のブームとなったガンプラブームにより、アニメ版に登場したMSはすべてガンプラとして商品化されます。これによりラインナップは底をついたといっても過言ではない状況になりました。 事実、MSに変わって、1/550スケールのMA(モビルアーマー)が発売されはじめ、「ドダイYS」や「ガウ攻撃空母」といったMS/MA以外の商品も販売されるようになります。さらに販売予定には「サイド7」といったものもラインナップされ、混迷を極めました。 そこで注目されたのが、クリーンアップまでされながらアニメに登場しなかったアッグシリーズです。大河原さんによって模型用に再度クリーンアップされたアッグシリーズは、こうしてガンプラとして世に出ることとなりました。同シリーズで最初に販売された「1/144アッグガイ」は、1982年7月に出荷されています。 この時期は劇場版ガンダム三部作もすべて公開され、ブームもひと段落したころでした。各社がポストガンダムとなる作品を模索していた時期で、ガンプラも一時期ほどの熱がなかったといえるかもしれません。 そのような時に登場したアッグシリーズは、間違いなくガンプラのカンフル剤として大きく機能しました。そして、この「アニメに出てこないMSを商品化する」という展開は、翌年に始動するメカニックデザイン企画「MSV(モビルスーツバリエーション)」への橋渡しとなります。こんにち、アッグシリーズをMSVとカテゴライズすることがあるのは、この縁を考えると妥当かもしれません。 こうして、アニメではNGとなったアッグシリーズが、奇妙な運命により日の当たる存在となったわけです。その後はアニメにも登場するわけですから、いまでいうところのリベンジを果たしたのかもしれません。
加々美利治