毎年“400軒”以上減り続ける豆腐屋…それでも業界の未来が暗くはないと言える理由
豆腐の供給過多で価格が下がり続けた
充填豆腐の賞味期限は、豆腐メーカーや凝固剤メーカーの開発努力の結果、「徐々に伸びて、今は2週間ぐらい。一番持つのがアサヒコさんのもので60日ぐらいです」と町田さんは話す。 スーパーで売られるカット豆腐も賞味期限が延び、今は4~5日が一般的になっている。こちらはより清潔な環境を保てるようになったことが要因だ。「昔は1日2日でした。豆腐を沈めた浸漬槽に手袋をして取り出せば、雑菌はつきにくくなります。最近の機械では、容器に入れるまで一度も人の手に触れないようにもでき、賞味期限が長くなりました」と町田さんは説明する。 2020年には、豆腐業界用に製造の各段階での管理法を記したHACCPの規定も作り、より清潔な製造に取り組んでいる。 豆腐メーカーについて、実は需要に対して数が多過ぎる傾向がある、と町田さんは説明する。 「今から30年ほど前に、スーパーさんで生鮮食品の『デイ+ゼロ納品』という方針が始まりました。製造した日のうちに納品することです。豆腐メーカーはそれまで、朝8時から夜6時まで製造していたのですが、日付を合わせるために24時間稼働しなければならなくなりました。 包装日が製造日になりますので、夜中0時から朝6時まで包装して納品するのです。しかも、スーパーさんは基本的に定休日がありませんから、24時間365日製造するようになった結果、生産能力が1・5倍から2倍まで伸びたんです。ラインの開発も進んで生産力はさらに向上しました」(町田さん)。 供給過多になった結果、豆腐の価格は下がり続けた。だから、むしろメーカー数が減って選択肢が減ったほうが、スーパーがより安いメーカーを選ぶことが難しくなり、適正価格にしやすくできる、というわけだ。 デイ+ゼロ納品については、メーカーとスーパーの交渉により、近年は緩和傾向にある。 「デイゼロ+1にさせてください、その代わり賞味期限を1日延ばします、という交渉をしてきました」と町田さん。 つまり納期を延ばすためにも、衛生水準を上げる必要がメーカー側にはあったのだ。