「やらない後悔はしたくない」山田尚子監督作で初声優の木戸大聖。演じたのは“やさしい大型犬”?
慣れない出来事に大汗をかいてしまった
――実際のアフレコは、おひとりで? いえ、基本的にはトツ子役の鈴川さん、きみ役の髙石さんと3人一緒に収録していました。3人そろって初めての声のお仕事だったので、お互いを高め合うような関係だったんです。それが作品のキャラクターとシンクロしていて、お互いに支え合っていけたところがよかったかなと思います。 すごく印象的だったのは、トツ子、きみ、ルイの3人が家に帰れなくなって、一晩一緒に過ごすシーンでした。普段、僕たちは役者をやっているので、身体で似たような状態を作ったり、五感で感じられるとさらに入りやすいのかなと思ったので、あの場を再現したんです。お互いが悩んでいることを言い合うという、あのしっとりした感じを出すために、レコーディングブースの電気をちょっと暗くして、あえて僕たちも座りながら収録したんです。雰囲気をなるべく近づけるという試みでした。 ――なるほど。生っぽい感覚を受けたのは、そうした雰囲気作りも影響していたんですね。完成したものを観て、自分の声がスクリーンから出てくるのはどんな感覚でしたか? もう……緊張してずっと汗をかいていました(苦笑)。 最近は実写映画の初号で自分の演技を観るのにもだいぶ慣れたはずだったんですが、今回は全然違いました。「あ、やばい、自分のシーンが次くる……!」みたいな(笑)。劇場に自分の声が響き渡るたび、体温がどんどん上がって汗をかいていました。 僕は自分の声自体がかっこいいとか、キレイだとかは本当にまったく思っていなくて。だけど、ルイがテンションが上がって叫ぶときにちょっと裏返るところは、自分で聞いていても「あ、このほうが人間味があるのかも」と感じたりはしました。 ――作品を通して木戸さん自身が感銘を受けたり、気づいたことなどはほかにありましたか? 自分の中でずっと意識していることですが、やりたいことや思っていることを「やらない後悔」「言わない後悔」はしたくないと改めて感じました。結局自分の中でしこりのように残ってしまうんですよね。 自分も今好きなお仕事をさせていただいていますが、仕事のたびに悩みは出てきます。悩みはあって当たり前だから、ちゃんと吐き出すようにしようと思いました。たとえ失敗したとしても絶対にその失敗が次に生きてくるので、3人のように、もっと素直に感情を出したり、言いたいことを言っていきたいし、もっと正直になりたいと思っています。 ――初挑戦ということもふまえて、『きみの色』への出演は、今の木戸さんにとってどんな意味を持つ作品になりましたか? まずは初めての声優業で山田監督の作品に出演できたこと、本当にうれしく感じています。監督の作品は人物の感情の変化、ちょっとした表情で、観ている人の五感に訴えかけることを大事にされているので、僕が今後ドラマや映画・舞台をやっていくときに生かしていけると思いました。声で表現しているときに、「自分はこういう声の表情ができるんだ」という気づきもあったので、またひとつ役者として成長させてもらえた大きな作品です。 もともと、ジャンルは違えどどの作品もすべてがつながっていって糧になるという考えを持っているので、今後もいろいろなジャンルのお仕事をやっていきたいです。声優業も、もちろんチャンスがあればまた絶対にチャレンジしたいです! 木戸大聖(きど・たいせい) 1996年12月10日生まれ、福岡県出身。NHK BSプレミアム「おとうさんといっしょ」レギュラー出演、2023年7月公開の映画『先生! 口裂け女です! 』で映画初主演、同年8月放送のドラマ「僕たちの校内放送」(フジテレビ系)にて連続ドラマ初主演。Netflixオリジナルシリーズ「First Love 初恋」の主人公・並木晴道の若き頃を演じて大きな注目を集める。 衣装クレジット Camphor Wood() MONO-MART(03-6417-0901) SANDERS JAPAN(03-6231-0115)
赤山恭子