ETCカード、貸し借りすると「違法」って本当? “普及率95%”に潜む落とし穴、家族からでもダメなの?
家族間使用のわな
2024年5月8日、大阪地裁で「電子計算機使用詐欺罪」(刑法246条の2)に関する注目すべき判決が下された。事件の内容は、自動料金収受システム(ETC)カードを同居している弟から借りた兄が、そのカードを知人が運転する車両で使用したというものだ。この際、弟は同乗していなかった。裁判所は、兄を含む3人に対して有罪判決をいい渡した。 【画像】「えっ…! 」これがバイク用の「ETC」です!(計18枚) 特に話題となったのは、ETCカードを借りた兄が暴力団関係者であった点だ。処罰の理由として、暴力団員であることが影響を与えたとされている。このことがきっかけで、警察の捜査が恣意(しい)的であるのではないかとの疑問も浮かび上がった。 しかし、今回注目すべきなのは、暴力団の関与ではなく、 「ETCカードを家族から借りて使用したことが罪に問われた」 という点だ。弁護側は、ETCカードを貸与したことがある人の割合が 「約4割」 にのぼるという調査結果を提示したが、裁判所は、この行為に対して可罰的な違法性があると結論を出した。 便利なETCカードだが、家族間であっても本人以外が利用すると罪に問われる可能性がある理由は、どこにあるのだろうか。
家族から借りたのに違法のワケ
判決の理由は「規約」に基づいている。事実認定のなかで争点のひとつとして挙げられているのは、「虚偽の情報」を提供したかどうかという点だ。ここでの「虚偽の情報」とは、システムで予定されている事務処理の目的に照らして、その内容が事実に反する情報を指している。 判決では、道路会社の利用規約に関して次のように説明されている。 「ETCカードによる支払いは、通行の都度、クレジットカード会社から貸与を受けている本人が乗車する車両1台に限り行える」 とされている。実際、阪神高速道路やNEXCO東日本の営業規則を確認すると、同様の内容が記載されている。また、カード会社の会員規約にも 「ETCの名義人本人のみが利用可能」 といった条項があり、ETCカードの第三者への貸与を禁じている。 つまり、たとえ同居する家族であっても、名義人が使用しなければ、今回の判決のように「電子計算機使用詐欺罪」に該当することになる。 とはいえ、家族内で複数の人が運転する場合や、レンタカーを利用する際に家族名義のETCカードを借りたい場面もあるだろう。では、どうすれば法を犯さずに済むのだろうか。