驚くべき57歳…周りに「全く惑わされず」現役続行 一切ブレないレジェンドの精神力【前園真聖コラム】
今年ピッチを去った者、現役にこだわり続ける57歳の姿に思うこと
2024年は多くの元日本代表選手が引退を表明した年だった。最高齢は50歳。そして35歳でも引退を表明している。かつてともにプレーした選手たちの引退を元日本代表の前園真聖氏はどう感じているのか。そして彼らよりもはるかに年上で現役にこだわり続ける選手についてどう思うのか、聞いてみた。(取材・構成=森雅史) 【写真】元日本代表MF、ジダン&フィーゴからの“両挟みシーン”「日本人選手の1番天才」 ◇ ◇ ◇ 2024年、いくつか寂しくなるような出来事がありました。それは知っている選手たちが引退することです。 特に伊東輝悦(50歳・沼津)は1996年アトランタ五輪に出場したU-23日本代表のチームメイトでした。50歳まで現役を続けたこと自体も驚異的でしたが、それでもやはり引退となると悲しいものです。 今年はいろいろな選手が引退しました。2002年日韓ワールドカップ(W杯)の日本代表メンバーで唯一現役だった稲本潤一(45歳・南葛SC・関東1部)、2010年南アフリカW杯、2014年ブラジルW杯のメンバーだった岡崎慎司(37歳・シント=トロイデン/ベルギー)、2011年アジアカップ優勝メンバーからは細貝萌(38歳・群馬)と森脇良太(38歳・愛媛)。 ほかにも代表経験者で言えば、水野晃樹(39歳・岩手)興梠慎三(38歳・浦和)と宇賀神友弥(36歳・浦和)、山田大記(35歳・磐田)、青山敏弘(38歳・広島)、藤田直之(37歳・鳥栖)、梅崎司(37歳・大分)と、たくさんの選手が現役を退くことになりました。 みんなに本当にお疲れ様と言いたいですし、その年齢まで現役を続けたことに対して称賛したいと思います。 ただ、こうやって選手を並べていくと、まだ現役を続けているカズさん(三浦知良・57歳・鈴鹿/JFL)の精神力や気力の凄さが分かります。11月24日に開催されたJFL最終節を見に行きましたが、最後にしっかりチャンスに絡んでいました。 カズさんは、現役を続けることについて外部からの意見に全く惑わされていません。ひたすら前を向いて、とにかく自分がやるべきことを全力でずっとやる。それが全然ブレていません。 ベテランになってくると、次第にベンチを温める時間が長くなります。ときには出番が来ないこともあります。それでも翌週のために全力で努力します。そしてまた出番が来なくても、次の週に向けて走り込むのです。これは精神的に本当に辛い作業です。 自分の現役時代に一番嬉しかったことを思い出していくと、やっぱり試合に出ている、ピッチに立っている瞬間に集約されます。逆に言えば、チーム内での立場を確立できていなくてベンチ外やベンチだった時、あるいは怪我でひたすらリハビリだけをしなければいけなかった時は、本当に辛い思いをしていました。その辛さにずっと立ち向かっていく姿をカズさんは見せてくれていると思います。 ピッチの上で今年引退した選手をもう見られないのは本当に残念です。彼らのプレーはこれからもずっと心の中に留めていきたいと思います。そして引退せず戦っているカズさんの姿を見て、僕も新たに心を奮い立たせて、自分にできることを精一杯やっていこうと思っています。 [著者プロフィール] 森雅史(もり・まさふみ)/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。
森雅史 / Masafumi Mori