イラン大統領搭乗のヘリが墜落か 安否巡り懸念強まる サウジなど周辺国が支援申し出
イラン国営メディアは19日、ライシ大統領とアブドラヒアン外相が乗っていたとみられるヘリコプターがイラン北西部の東アゼルバイジャン州で異常な着陸をする事故が起きたと伝えた。墜落した機体が見つかったとの報道もあるが、否定する情報も出るなど錯綜(さくそう)している。 最高指導者ハメネイ師が「無事を祈っている」と述べたほか、サウジアラビアやトルコなど周辺諸国が捜索などの支援を申し出るなど、ライシ師らの安否を巡る懸念が強まっている。 イランはパレスチナ自治区ガザの戦闘でイスラム原理主義組織ハマスを支持し、イスラエル本土を攻撃するなど影響力を誇示してきた。ライシ師の身に異変が起きれば地域情勢にも影響を与えそうだ。 ライシ師は19日、ダムの完成式典に出席するためアゼルバイジャンとの国境周辺を訪れ、ヘリで戻る途中だった。アブドラヒアン氏も同乗していたとされる。 バヒディ内相は救急チームが向かっているとしたが、「霧と悪天候のため現場到着までに時間がかかる」と述べていた。現場は森林地帯だという情報もある。国営テレビは北東部の聖地マシャドで、巡礼者らがライシ師の無事を願って祈りをささげたと報じた。 ライシ師は1960年、北東部マシャド生まれ。シーア派聖地の中部コムで学んだ聖職者で、反米の保守強硬派の代表的存在だった。2017年の大統領選で穏健派のロウハニ氏に敗れたが、21年の選挙で勝利して大統領に就任した。 司法畑が長く、政治犯数千人に死刑判決を言い渡した1988年の裁判の判事の一人とされ、トランプ前米政権は2019年に制裁対象に指定した。ハメネイ師同様、イスラム教の預言者ムハンマドの血筋であることを示す黒いターバンを着用していた。(中東支局 佐藤貴生)