レスリング・樋口黎が金 地獄の減量明るく支えた愛妻の存在「僕がストレスフリーに食生活を送れている。ありがたい」
「パリ五輪・レスリング男子フリースタイル57キロ級・決勝」(9日、シャンドマルス・アリーナ) 男子フリースタイル57キロ級決勝で2016年リオデジャネイロ五輪銀メダルの樋口黎(28)=ミキハウス=がリー(米国)を4-2で下し、金メダルに輝いた。日本勢の男子フリー最軽量級の制覇は1988年ソウル五輪48キロ級の小林孝至以来、36年ぶり。 ◇ ◇ 壮絶な減量生活を送る樋口の心の支えとなっているのが、妻・優貴さん(29)の存在だ。今年2月には長女の凪ちゃんが誕生。「気負うことなく自然体で生活できているので楽」。8年前にはいなかった家族の存在が背中を後押しした。 元々レスリング選手だった優貴さんとは高校時代に初めて出会った。同学年で、最初の印象は「なんかかわいい人だな」(樋口)「ぼうず頭だな」(優貴さん)。時を経て、東京五輪以降に交際するようになった。「一緒にいて楽」と気が合い、昨年5月に入籍した。 家庭内では優貴さんが洗濯係で、食事に細心の注意を払う樋口は料理係。食事の中心となる鶏肉は皮や脂をきれいに取り除いて、妻の皿に入れる。樋口と反比例するように優貴さんが太ってしまうという。 「糖質を減らすときは甘いものを一切食べずに、脂っこい食事になったり結構極端に変わる。それに無理して付き合ってもらいながら、僕がストレスフリーに食生活を送れている。ありがたい」。優貴さんは「私は食にそこまで執着がないので、食事を作ってくれるならありがたくいただく感じ。むしろ助かっている」といい「代わりに私ががっつり太っていくような食生活をしている」と笑う。ある時、優貴さんが「減量つらいよね」と気遣うことを言いながらポテトチップスを食べており「いや、食っとるやないかい」とつっこんだ。 レスリングは家庭には持ち込まず、試合や練習の話題も一切しない。家では対戦相手の研究もしないが、ある時、樋口が真剣な表情でモニター画面を凝視していた。優貴さんが「試合動画かな?」とのぞいたところ「やばいやばい!ゲーム実況が始まる」と、大好きなゲーム動画だったため、ずっこけた。家で真剣な表情をするのはゲームをしているときだけ。「30分のつもりが2~3時間たっていて、妻に怒られる(笑)」 明るく楽しく支えてくれた最愛のパートナーに、最高の瞬間を届けた。表彰式後のインタビュー中、観客席にいた優貴さんの姿を見つけると視線を送り、首からメダルを外して中断。客席から降りてきた妻に金メダルをかけると、優貴さんの目には涙があふれた。そして、ともに向かい合って丁寧にお辞儀。サポートしてくれた妻に感謝を伝えた。