“全ロスト”の恐怖と重厚メカアクションのコンボで緊張感がヤバい! ロボット版『タルコフ』な新作『SYNDUALITY Echo of Ada』(シンデュアリティ)の試遊で悔しさのあまり台パンしかけた話
「台パンするほど悔しくなれる対戦ゲーム」は、ビチャビチャに脳汁を吹き出したいという願望に塗れた、筆者をふくむ一部のアドレナリンジャンキーたちにとって最高の作品だ。 『SYNDUALITY Echo of Ada』画像・動画ギャラリー 近ごろでは非常に高い人気を誇る『Escape from Tarkov』(以下、タルコフ)や、大いに話題を呼んだ『Dark and Darker』のような作品はその最たるものだと言えるだろう。これらに共通するシステムが、俗に言う「全ロスト」。探索中に死ぬと頑張って集めた持ち物をすべて失ってしまう……という非常にスリルにあふれ、故に人を狂わせる要素である。 このたびご紹介するバンダイナムコエンターテインメントの新作『SYNDUALITY Echo of Ada』もまた、爽やかな見た目に反して「全ロス覚悟」の出撃を強いられるPvPvE作品だ。本作でプレイヤーが動かすのは重厚なロボットであり、その重たい挙動が『タルコフ』系作品ならではのヒリつきをさらに加速させている点も大きな見どころ。 さらに作中では「プレイヤーの好みの立ち回り」を学習し、プレイヤーにマップ情報やアドバイスを寄せてくれるAI搭載ヒューマノイドの相棒・メイガスも登場。「ひとりなのにデュオ」のような心持ちでゲームを楽しめる。このように流行のスタイルを踏襲しながらも、本作ならではの進化を目指す意欲的な作品に感じられた。 筆者が体験したのは本作のほんの一端に過ぎないが、正式版にもこの絶望と快楽を大いに期待したい。本稿を通じ、「ヒリつきたくて仕方がない」タイプの皆様に本作が持つ可能性が伝われば幸いだ。 文・取材/りつこ ■理論上“は”敵でも味方でもないプレイヤーたちと「危険な地上」に出撃。実際のところバリバリ世知辛い 『SYNDUALITY Echo of Ada』はゲームやテレビアニメ等で展開する大型SFプロジェクト『SYNDUALITY』のゲーム作品。ゲームは1月8日より第2クールの放送を開始したアニメ版の前日譚にあたり、2222年の崩壊した世界を舞台に人とAIの関係が描かれるという。 作中の世界は「触れると死に至る雨」が世界中に降り注ぐ現象により、人類が地下に拠点を移している。 プレイヤーは人類に残されたエネルギー資源「AO結晶」をロボットに乗り採掘する職業「ドリフター」となり、ロボット兵器「クレイドル・コフィン」を駆使して危険な地上のミッションに挑んでいくこととなる。 ゲームプレイは「クレイドル・コフィン」でCBT段階では最大12人のプレイヤーが滞在するマップに出撃し、「AO結晶」を中心とするアイテムの採集、任意の組織から与えられたミッションの達成、そして生還することを目的に進行していく。 フィールド上には「エンダーズ」と呼ばれるクリーチャーやロボットに搭乗した盗賊団、そして前述したプレイヤーが存在する。 なお、他プレイヤーは「敵でも味方でもない」存在であり、お互い襲撃したり、されたりできる関係性だが、必ずしも敵対する必要はない。成功するかはさておき、共闘を持ちかけることも可能だ。 帰還する方法は、フィールド上にいくつか存在する地下へのエレベーターを起動し、搭乗して下降すること。エレベーターを呼び出すには30秒時間を要し、到着してから下降するまでにも15秒ほどの時間を要する。 もちろんエレベーター付近で他プレイヤーを待ち伏せすることも可能なため、帰還までの待機時間も周囲の警戒を欠かしてはならない。帰るまでが遠足だ。 もしフィールド上でダウンしてしまえば、基本的に持ち込んだアイテムおよび乗機のパーツや武器もほとんどロストしてしまう。【※】 出撃時にコストを支払うことでアイテムに「保険」をかけることは可能だが、すべてのアイテムに保険をかけ続ければ余裕で破産する。さらに、装備や武器には耐久値が設けられ、修理をするにもお金がかかる。 なので、本作をプレイする際……特にゲームを始めたてのころなどは「何をするにもお金がかかる」「手間暇かけた装備を失うかもしれない」といった切迫した状況に陥ることが予想される。 そんな世知辛い状況を切り抜ける手立ては何か。それはズバリ、略奪ではないだろうか。 ■「爽やかなSF作品」に見えてドロドロのハードコア。プレイヤーキルの快感が人を獣にする 先述したように本作では共闘もできる。しかしマップ上で出会ったプレイヤーは、基本的にいつ襲ってくるか分からない存在だ。「敵でも味方でもない」と言えど、充分に危険な存在であることは間違いない。 また、プレイヤーキルをせずに出撃したとて、修理代などでお金が掛かるし、クリーチャーと戦うのもそれはそれで危険だし、まったくもってこの世界は世知辛い。なんなら、ちょっと悪いことをして「極めて合理的」に資材を回収してもバチは当たらないのではないだろうか。 少なくとも筆者はそう感じたし、実際に限られた試遊時間のなかでメチャクチャ襲撃した。 一度襲撃の楽しさを知れば、他プレイヤーはたちまち「ドロップアイテムが美味しい、少し強い敵」に見える。 そして「全ロスト」システムにより、PvPで敵を倒しねじ伏せた時の快楽は倍増する。大破させたクレイドルのコックピットを覗けば、きっと悪魔のような表情をしたプレイヤーがキ―ボード、モニター類をブン殴っていることだろう。 つまり、本作にはプレイヤーが自然と「ハイエナのようなプレイヤーキラー」になってしまうようなシステムや調整が施されているように思う。 実際にプレイヤーをキルするか否かは個々人に託されているが、それでも「コイツはハイエナ野郎なんじゃないか?」と出会ったすべてのプレイヤーを警戒する必要が生まれている。 結果として本作にはピリピリとした疑念や勘ぐりが渦巻いており、戦場に一歩足を踏み出せば、ポストアポカリプスらしく容赦ないプレッシャーが待ち受けているはずだ。 ■重たいロボアクションと「PvPvE」「全ロスト」の相性が“ヒリ付く”楽しさを増幅させる また、本作のアクションが“重たい”ことも大きな魅力であると思う。 ゲームプレイにおいては、メインウエポン及びサブウエポンでの攻撃、近接攻撃のほか、少しの段差のみ登れるジャンプ、スラスターによる移動が主な動作となっている。 ロボット兵器であるためギュインギュインと猛スピードで移動できるかと言われれば、そうではない。「クレイドル・コフィン」はリアルロボット調の重厚な挙動をしており、武器の変更やアクションの切り替え、回復アイテムの仕様など、ありとあらゆる動作にそこそこな時間を要する。 この仕様は一見するとストレスの要因でしかないように思えるが、筆者はむしろ非常に本作の「全ロスト」形式にマッチしているように感じた。 その理由としては、各動作のスキが大きいことで、さまざまな場面で「リスクが目立つ」ことによる緊張が生まれているからだ。 まず重厚で隙が大きいアクションは、すべての動作が敗北へと繋がりかねず、あらゆる動きのリスクを否応なく感じさせられる。プレイヤーはおろか、大したことなさそうに見えるザコ敵相手でも「ぜんぜん負けられる」可能性があり、実際にプレイした際にも「ちょっとモタついてたら負けていた」という場面がしばしば存在した。 また、本作では銃声やメカメカしい駆動音により「戦っている他プレイヤーが近くにいる」ことが直感的に理解でき、なんなら音を辿って出会いに行くこともできる。 そして、戦闘中は上述した「隙の大きなアクション」を連発しているため、かなり漁夫の利を得られやすい。言うなれば、戦闘そのものが「自分は戦っていて隙だらけです!」と大声で叫ぶような行為であり、戦うこと自体が新たな敗因を呼び込みかねない。しかし、戦わなければゲームは進まない……。 つまり「重厚なアクション」と「PvPvE形式」が並走することで、本作のゲームプレイは敗北のリスクまみれになっており、結果的にバチバチに緊張感のある出撃体験が楽しめるようになっていた。 ここで改めて注目したいのは、そもそも本作は「全ロスト」というギャンブルめいたリスクがゲームプレイにおける前提になっている点だ。 このデカ過ぎるリスクがあるからこそ、生還や戦闘の勝利、ミッションの成功に莫大な達成感が生まれているし、出撃中は恐ろしく緊張する作品になっている。 つまり、全ロストと上述した重厚なアクションは、「リスクが高いこと」と、それに基づく「緊張感」という同じ“味”を持っている。このような隅々までヒリついた体験を提供しようとする濃密な設計こそ、『SYNDUALITY Echo of Ada』や『タルコフ』ライクならではの魅力を作り出しているのだろう。 ■「プレイヤーの好み」を学習する相棒AI・メイガス。プレイスタイルにあわせた選択も可能 また、本作のユニークな要素としてプレイヤーの戦闘や探索をサポートしてくれる相棒のようなAI搭載ヒューマノイド・メイガスの存在も見どころだ。 メイガスは「クレイドル」の背部に搭載されるかたちとなっており、周囲の環境やアイテム、対峙した敵の情報、敵の戦闘力を加味した交戦の推奨度などをリアルタイムでアナウンスしてくれる。 本作では基本的にソロプレイを想定した作品となっているが、まるで知人と「デュオ」で対戦ゲームをプレイしているように戦況を「コール」してくれる点がユニークなポイントのひとつである。 またメイガス最大の特徴は、彼らが出撃する度に学習していく点にある。 本作では出撃後にプレイヤーの活動記録をメイガスが振り返ってくれるのだが、時系列順に出来事を紹介してくれる。その際に敵が出現したポイントやアイテムを収集できた場所を学習。その後は、学習した情報を踏まえたアナウンスや警告、提案を行うように変化していく。 さらに、メイガスはプレイヤーの好みにあわせて最適化される。たとえば、「プレイヤーがプレイヤーキル」をしまくっていれば「近くのプレイヤー情報」をアナウンスし、プレイヤーの撃破を提案してくれるようになるという。 試遊の段階ではプレイ時間が限られていたため学習の変化は確認できなかったが、正式版で実際に成長を目の当たりにすれば、相棒としての愛着も湧いていくだろう。パイロットと補助AIという構図も、さながらロボットアニメのようでちょっと嬉しい。 くわえて、メイガスには複数のタイプが存在し、タイプごとに戦闘において有利な「バフ」を発揮し、タイプに応じたスキルを使用可能となる。 筆者は回復に要する時間が短縮され、「回復できる空間」を一時的にステージ上に出現させるタイプの「クレイドル整備型」を選択した。プレイした際に回復パックやスキルのお世話になる場面が何度かあったが、この効果によって生き延びれたと感じる場面もかなり多かった。 本作では腕、胴体、足の3パーツに分かれた「クレイドル」のカスタマイズによりステータスが変化する仕様だが、メイガスのタイプの選択も大きくプレイスタイルに影響を及ぼしそうだ。 ■風呂を作らないと相棒が汚れ続けるもの悲しさ。拠点を強化し効率化&強化 また、本作では獲得した資材や資金を使って拠点を強化することができる。ゲーム冒頭の拠点はボロッボロの廃墟であるが、アイテムや資金を支払うことで設備を整えることができる。 拠点を強化していくことで「クラフト」や「修理」といったアクティビティが行えるほか、施設を強化することで恒常的に主人公機を強化する効果なども発動する。つまるところ「強化」するほど長期的なゲームプレイにメリットを与えてくれるというわけだ。 なお、ゲームをプレイするたびにメイガスが土埃を被ったような姿になる点が気になったのだが、これは拠点にお風呂を作成しなければ清潔な状態に治らないという。シビアなのは戦闘だけでなく、メイガスの運用においても徹底されている。 相棒をお風呂に入れてあげるのは、ゲーム序盤の大きな目標になりそうだ。 ■敵の数が多すぎる上位ステージ「南方領域」がエグイ。漁夫の利を狙う快楽、そして台パンへ… 最後に、本作の高難度エリア・南方領域を紹介しよう。 南方領域は“とある条件”をこなすことで出撃可能となるエリアで、危険な盗賊が跋扈し、存在するクリーチャーも強力な無法地帯だ。 従来ではゲーム序盤の装備で挑めるエリアでは無さそうだが、体験会の後半では特別に所持金を増やして頂き、強力な装備を購入して挑んだ。 いざ出撃すると、個体が強いのは勿論のこと、敵の数がハチャメチャに多い。結果として「隙」でしかないリロードのタイミングが増加し、あえなく序盤で倒されかけた。頂いた所持金を全額ベットした機体はスラスターの性能が高く、全力ダッシュを活用することでいくつかの物資を獲得。ひとまずエレベーターに到着することができた。 とはいえ、せっかく高難度ステージを訪れて、僅かな物資のみを持ち帰るのは物寂しい。そこで再び周囲を探索しようと飛び回ると、悲劇が起きる。 エレベーターからわずかに移動すると、「クレイドル」に寄生した見知らぬバイオパンクなクリーチャーが登場。さらには上空を飛行し、打点の高いレーザーを放つクリーチャーが出現。急いでスラスターに点火をし離脱すると、ゴリゴリの高火力武器を搭載した盗賊の接近をメイガスが告げる。 正直に言えば、1マップ目で大手ゲームメディアの名を冠するドリフターを撃墜したことで、筆者は浮かれていた。とにかく強そうなクリーチャーたちの猛襲は、未だ大海を知らない新人ドリフターに、世界の広さを教えてくれたのである。 体験会の終了時間まで残り10分。しっかりと反省し、ミニマップ上に表示されたエレベーターのアイコンを目指す。 ミニマップによると数メートルでエレベーターに到着するようで、徐々に温かい安心感が胸の辺りに湧いてくる。すると、どこからともなく飛んできた砲弾により機体が即大破したのである。 全財産を消費してゲットした紫色でギラギラの高級装備を、体験会の最終盤で見事に全ロスした。 筆者のクレイドルを撃墜したドリフターの名は、どこか聞き覚えがあるゲームメディアの名前であった。 今回は約90分ほどの限られた時間での試遊となっていたが、こうして筆者は『SYNDUALITY Echo of Ada』で「全ロス」したり、「全ロス」させることで、しっかりと“あったまる”ハードコアな作品であることを確認できた。 爽やかなツラをしているが、わずかなプレイ時間でも緊張感のある探索、そしてドロッドロのバトルを楽しめた本作。興味がある読者は本作の公式X(旧Twitter)アカウントや公式サイト、公式Discordサーバーをチェックし、追って開催されるクローズドベータテストや正式リリースに備えよう。
電ファミニコゲーマー:りつこ
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