「衛星画像を用いた中国の戦略核戦力増強の現状に関する分析」で判明 「最小限抑止政策」とは違う現実
東大先端科学技術研究センター准教授で軍事評論家の小泉悠が3月5日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。東京大学先端科学技術研究センターと笹川平和財団が共同で研究した「衛星画像を用いた中国の戦略核戦力増強の現状に関する分析」について解説した。
東京大学先端科学技術研究センターと笹川平和財団の共同研究「衛星画像を用いた中国の戦略核戦力増強の現状に関する分析」
飯田)「衛星画像を用いた中国の戦略核戦力増強の現状に関する分析」という研究が公開されました。小泉さんが所属する東京大学先端科学技術研究センターと笹川平和財団の共同研究で実施したものです。素人にはただの写真にしか見えませんが、「専門家が分析するといろいろなものが見えてくるのだな」と思いました。 小泉)3月4日に公開されたレポートです。「ただの写真にしか見えない」とおっしゃいましたが、地上に出ているものを見ると、誰が見てもただの写真にしか見えない場合が多いと思います。今回は珍しい取り組みとして、「SAR(合成開口レーダー)」を使ったら違うものが見えるのではないかと思い、レーダーそのものの専門家や中国の専門家、また核戦略の専門家で集まりました。約半年、みんなで揉んでつくったレポートです。
SARによって、テントで覆ったロケットの全部に発射管が入っていることを確認
飯田)SARを使うと、どんなことがわかるのですか? 小泉)電波を使うので、夜や天気が悪いときでも見えます。また、波長にもよりますが、薄いものであれば透過するのです。我々が今回使ったSARの衛星はXバンドという周波数帯を使っているので、薄いものは透過します。中国はミサイル発射管の穴を掘るとき、上にテントをかけるのですが、透過するので「テント内部が見えるのではないか」ということになったのです。 飯田)なるほど。 小泉)テントをつくり、300本くらいミサイル用の穴を掘ったと言われていますが、本当に全部にミサイルの発射管が入っているのか。あるいは攻撃を吸収するための囮が混じっているのかなど、そういう話がずっとあったのです。中国は以前から囮をたくさんつくることで知られているので、「今回はどうなのだろう」と思いました。全部は見ていませんが、サンプルを抽出してみたら、どうも全部に発射管が入っているようなのです。