水不足の救世主まではいきませんが…東京・利島を救った「海水淡水化装置」
まだ梅雨半ばの関東地方ですが、既に、埼玉県熊谷市や群馬県館林市で猛暑日も出るなど、今年は水源地で雨の日が少なく、空梅雨ともいわれています。東京などの水源となっている利根川水系のダムでは貯水率が低くなっており、関東地方整備局は16日から一部取水制限を始めました。 ただ、東京都水道局が管轄する23区26市町は、埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬の1都5県などと利根川水系を共有しているので、ある程度の水の融通ができます。しかし、同じ東京都でも伊豆諸島のような離島では、ほかの地域と水を融通することができないため、自治体ごとに水確保に苦心しています。その中で、この空梅雨で水危機に見舞われた利島(としま)を救ったのは“海水淡水化装置”でした。
水確保に苦心する離島にかかせない装置
利島は東京から南に約140kmに位置し、周囲約8km、面積4.12平方km、伊豆諸島の小さな島です。もともと、島には川がなく、水を貯めにくい円錐形の地形ゆえに、昔から工夫を凝らして生活に必要な水を確保してきました。利島村には約300人の島民が在住し、島内には1万2千トンの貯水池があります。普段は貯水池に貯めた水を使っていますが、それだけでは水需要を満たせないたので、海水淡水化装置で不足分の水を補っていました。 ところが、5月にそのポンプが故障。そこに、今年の空梅雨が直撃しました。利島村は渇水対策本部を設置し、水資源機構や東京都水道局、民間事業者などに救援を要請したのです。 中でも、水資源機構は全国7水系で水資源の開発をおこなっている独立行政法人で、緊急時用に海水淡水化装置を保有しており、利島村の救援に向かうことになりました。 水資源機構水路事業部の鈴鹿克俊さんによると「当機構で保有している淡水化装置は、1機で一日に50トンの海水を真水にする能力を持っています。この機械を設置したことで、約200人分の生活用水を確保することができました」と言います。 淡水化装置でろ過された水は、もちろん飲むこともでき、支援の結果、利島村の水不足は完全に解消されていないものの、危機的状況は回避されました。