水不足の救世主まではいきませんが…東京・利島を救った「海水淡水化装置」
過去の水不足が開発のきっかけ
利島のような危機的状況にまではなっていませんが、首都圏もこのまま、まとまった雨が降らず、水不足に陥るのではないかと不安が広がっています。1都5県が水不足になった場合は、海水淡水化装置を使って、水不足を解消できるのでしょうか。 「一人が一日に使う水は約250~300リットルといわれています。海水淡水化装置は熊本大震災といった緊急時でも活躍していますが、生活用水を恒常的に確保することには向いていません。あくまでも、非常時に使用するものと捉えるものだと考えます」(鈴鹿さん)。 実は、海水淡水化が本格的に研究されるようになったのは、1994(平成6)年の渇水がきっかけだったといわれます。この年は、九州北部から関東にかけて水不足が深刻な問題になりました。 それから約20年が経過し、海水淡水化の研究開発はつづけられていますが、それでもダムによる貯水や、日ごろの節水が何よりも水の確保には効果があります。水資源機構や地方自治体はダムの開発や用水路の整備を進めて万全の体制を整えてきましたが、それでも水不足が起きてしまいます。 昨今、コンビニや自動販売機でもミネラルウォーターが販売されて、手軽に手に入るため、水が貴重な資源であるという意識は薄くなり、「水不足」という言葉は時代錯誤のように感じられるかもしれません。しかし、水は飲用ばかりではありません。トイレ・洗濯・入浴・洗顔・歯磨き・食器洗いなど、あらゆる生活シーンで必要です。また、工業用水や農業用水にも大量の水が欠かせません。 今年の水不足は、普段は無意識に使っている水が、実は、貴重で重要な資源であることに改めて気づかされたことになります。水を大切に考え、無駄遣いしないことを利島のケースからも、心掛けたいものです。 小川裕夫=フリーランスライター