ファーウェイ、米国の規制下も利益2.4倍 23年通期
中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)がこのほど発表した2023年通期の決算は、純利益が前年比140%増(2.4倍)の869億5000万元(約1兆8200億円)だった。これは06年に比較可能な数値を公表して以来、最大の伸びとなる。売上高は10%増の7041億7400万元(約14兆7500億円)だった。米国政府による輸出規制の影響を受けながらも、すべての事業部門が増収だった。 ■ 消費者部門17%増収、スマホ好調 ファーウェイによれば、成長を支えたのは、コンシューマーエレクトロニクス事業とクラウドコンピューティング事業。スマホやパソコン、ウエアラブル機器などのコンシューマー事業の売上高は17.3%増加した。輪番会長の胡厚崑(ケン・フー)氏は「過去数年間は多くの困難に直面してきたが、次々と訪れる課題を乗り越え成長を遂げた」と自信を示した。 ファーウェイは輸出規制下にありながら23年8月に、自社開発半導体を搭載した高機能のスマートフォン「Mate 60 Pro」を発売し、米政府を驚かせた。 同社はかつて、スマホ出荷台数で世界1位に浮上していた。だが、19年に当時のトランプ米政権が同社を安全保障上の脅威とし禁輸措置を講じた。同社は半導体など重要部品の供給制約を受けてスマホ生産が減少。低価格スマホ事業のオナーを売却せざるを得なくなった。 ファーウェイの中国におけるスマホシェアは20年半ばに29%あったが、2年後にわずか7%に低下した。そうした中でも同社は半導体などの部品の自社開発を進めた。23年8月には、5G(第5世代移動通信システム)への接続機能と、7ナノメートル(nm)技術で製造された半導体を採用したMate 60 Proを市場投入し、中国の消費者を引き付けた。
■ 復調、Mate 60シリーズが奏功 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、Mate 60シリーズ発売以降、ファーウェイは中国市場における高価格帯スマホ市場のシェアで、米アップルを徐々に追い上げている。決算発表の24年3月29日には、同端末と自社開発のオペレーティングシステム(OS)「鴻蒙(ハーモニー)」が「幅広い評価を得た」と強調した。「コンシューマー事業は、大きな技術的障壁を克服し、業界で最も困難な課題に取り組んだ結果、成長を遂げた」(同社) ファーウェイはスマホの販売台数を明らかにしていない。だが、業界動向に詳しい中国TFインターナショナル証券のミンチー・クオ氏は、Mate 60シリーズは24年8月までに少なくとも1200万台の出荷が見込まれると予測する。 ■ クラウド事業22%増、競合より高成長 他の事業の売上高は、通信網整備などのICT(情報通信技術)インフラ事業が2.3%増の3619億9700万元(約7兆5800億円)、クラウドコンピューティング事業は21.9%増の552億8700万元(約1兆1580億円)だった。ファーウェイは中国第2位のクラウドコンピューティング企業である。同国第1位は、アリババ集団。クラウド分野の競合には騰訊控股(テンセント)もあるが、ファーウェイはこれら2社よりも高い成長率を達成した。 一方、同社収益の約70%は中国国内からのものである。米政府による輸出規制を受ける前の19年時点ではこの比率は約60%だった。米当局は、米国の通信事業者に対してファーウェイ製通信機器の購入を禁止し、同盟国に対しても使用を控えるよう働きかけた。これが、収益の中国比率が上昇している要因の1つである。 アナリストによると、ファーウェイは中国政府の国産化政策の恩恵を受けるとみられる。中国政府は、半導体などの自給率向上を目指している。同社はこれら分野の研究開発費を増やしている。23年は研究開発に1647億元(約3兆4500億円)を投じた。これは同社売上高の23.4%に当たる。
小久保 重信