パリ・東京・大阪のモダンアート競演 大阪中之島美術館「TRIO」展 3作の化学反応やいかに⁉
パリ市立近代美術館、東京国立近代美術館、大阪中之島美術館の所蔵品から1作品ずつ選び、トリオで紹介するユニークな展覧会「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」が大阪中之島美術館(大阪市北区)で開催中だ。ピカソやモディリアーニ、マティス、岡本太郎、草間彌生ら近現代美術の世界的アーティスト110人による名品150点が競演、見る者を強くインスパイアする空間が広がっている。2024年12月8日(日)まで。 【写真】日本初公開。アンリ・ルソー《蛇使いの女》を下敷きとした衝撃的な作品 34組のトリオを7章立てで構成。3館の学芸員が議論を重ねながら、▽主題や時代背景が同じ▽色や形、構図、モデルのポーズが似ている▽作家同士の交流があった―など、多様な視点で1年以上かけてセレクトしたという。トリオにはそれぞれタイトルが付けられていて、どこが同じ・似ているかについてのヒントとなっている。作品単体での鑑賞に加え、3作を見比べる楽しみ、“化学反応”まで存分に味わえる。 分かりやすいのは、たとえば「モデルたちのパワー」というトリオ。アメデオ・モディリアーニの『髪をほどいた横たわる裸婦』(1917年、大阪中之島美術館蔵)、アンリ・マティス『椅子にもたれるオダリスク』(1928年、パリ市立近代美術館蔵)、萬鉄五郎『裸体美人』(重要文化財/1912年、東京国立近代美術館蔵。11月22日[金]まで展示)という組み合わせで、3作品ともモデルはくつろいだポーズで寝そべる女性だ。どの女性も見られることに頓着せず、まるで挑発するかのように、口元に微笑を浮かべているのが印象的。学芸員によるトリオ決めも異議なしの即決だったという。 「現実と非現実のあわい」の3作品は、先人による絵画のモチーフを引用、画家が自らの分身的な存在を画面に描き加えたもの。名作へのオマージュであるとともに、描き手の強いこだわりが伝わってくる異色の作品群だ。 「夢と幻影」には、半裸の女性を背中に背負った巨大なウサギのような動物が、天地逆さまの場所にいたり(マルク・シャガール『夢』1927年、パリ市立近代美術館)、色とりどりの蝶が雲の上で舞ったり(三岸好太郎『雲の上を飛ぶ蝶』1934年、東京国立近代美術館)、不気味な雲が空を覆う中、草木一本生えていない大地の上に女性が1人座っていたり(サルバドール・ダリ『幽霊と幻影』1934年ごろ、大阪中之島美術館)と、この世ならぬ世界が広がる。そこはかとない死の気配という共通性によって、3作が地続きとなり、それぞれの作品にさらなる奥行きが生まれたことを感じさせる。 絵画以外にも、バラが封じ込まれたアクリルの椅子、ガラスで密閉された鳥かご、折り紙を丸めてホチキス留めした工作(「日常生活とアート」)の立体作品トリオなどを展示。 大阪中之島美術館の高柳有紀子主任学芸員は「各館のコレクションの魅力を最大限使いたいという思いから、トリオという手法が採用された。自由な発想で組まれているので、一見かけ離れたものもある。このような機会がなければ、隣に並ぶことはない作品もあっただろう。それぞれを比較したり、他の人の意見を聞いたりしながら、お気に入りのトリオを見つけてもらえたら」と話した。
ラジオ関西