保護司殺害、容疑者は「低リスク」対象者か 目立つトラブルなく…専門家「突発的な事件」
保護観察中の男が担当保護司を殺害したとされる事件を巡っては、2人の間に目立ったトラブルは報告されていない。専門家からは「突発的な事件」との見方も出ており、全国の保護司らは事件に巻き込まれるリスクに不安を抱いている。安全確保策が不十分のままではなり手不足が深刻化しかねず、国は早急な対策を迫られている。 【図で解説】保護観察対象者の面談頻度は再犯リスクに応じて決まる 《やっぱり保護って言葉は要注意ワード》《殺そうかなって妄想してる前から構想はある》 逮捕された飯塚紘平容疑者とみられるX(旧ツイッター)のアカウントからは、保護観察への不満だけでなく、反社会的な姿勢を示す投稿も散見される。ただ、元保護観察官の中村秀郷西南学院大准教授(司法福祉・精神保健福祉)は「保護観察の対象者がネット上に過激な投稿をしながら、面談では素直なケースはよくある」と指摘する。 殺害された新庄博志さんは保護司として飯塚容疑者を1人で担当し、最近は新庄さん宅で月2回ほど面談。5月の面談は7日に実施し、2回目の24日夜の面談中に殺害された疑いがある。中村氏によると、保護観察対象者は再犯リスクなどを考慮して5段階に区分した上で、保護司や保護観察官の面談頻度などを決めており、月2回の面談だった飯塚容疑者は低リスクに分類されていたとみられる。 一方で、保護司には担当の保護観察官がつき、夜間や休日でも速やかに保護観察所の管理職に連絡できる態勢をとっているという。中村氏は「対象者に怒鳴られるなど保護司に不安があれば保護観察官にすぐ連絡し、自宅での面談を避けたはず。保護観察官の直接担当に変更する場合もある。これまで2人に目立ったトラブルがないのなら、突発的に何らかの問題が起きた可能性が高い」と話す。 保護司が元保護観察対象者に殺害された事件は昭和39年に起きたが、保護観察中の事件は記録がない。今回の事件で保護司の間には不安が広がっており、法務省は10日、保護観察対象者とのトラブルなどを総点検するよう全国の保護観察所に通知。保護司らの意向に応じ、保護観察官の直接指導に変更▽担当保護司を複数指名―などの対応を検討するよう求めた。 母親も保護司として四半世紀以上活動しているという中村氏は「日本の保護司制度は世界に誇る制度。保護司たちは無報酬でも『必ず立ち直る』『社会で受け入れてあげたい』『地域を良くしたい』との思いで本気で取り組んでいる」と強調。「保護司のなり手が減っている中、今回の悲しい事件で減少に拍車がかかることを危惧している。保護司本人や家族が不安にならないよう、国はフォローアップを急ぐべきだ」と述べた。