アラムコ、配当を約4兆5600億円に増額-サウジ財政に恩恵
(ブルームバーグ): サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは、エネルギー価格下落と生産量の減少にもかかわらず、投資家とサウジアラビア政府への配当を増やした。財政赤字が増大するサウジ政府には恩恵をもたらす。
2023年10-12月(第4四半期)の配当総額は約310億7000万ドル(約4兆5600億円)で、原油生産量の減少により年間純利益が前年比25%減少したにもかかわらず、特別配当も含めて前四半期から増加した。
世界最大の原油輸出業者であるアラムコは、手厚い配当を通じサウジ政府に多くの収入をもたらしている。ムハンマド皇太子は、未来都市計画「NEOM」や有名サッカー選手の獲得、スポーツリーグへの出資など、高額プロジェクトを推進する一方で、石油からの経済多角化を目指しており、アラムコの配当は政府にとって一段と不可欠になっている。
また、増配の背景にはサウジ政府が今年、アラムコ株の追加放出を行う計画を復活させていることもある。19年の新規株式公開(IPO)時に世界の投資家は、アラムコの評価予想と同業他社に比べて低い利回りをみて二の足を踏んでいた。
潜在的な投資家はサウジの財政赤字に注目しそうだ。サウジ政府の予測では、26年まで毎年赤字となる見通しで、経済改革計画の一環として開始したプロジェクトの一部を30年以降に延期を余儀なくされた。サウジ政府は先月、アラムコに対し、生産能力の拡張を停止するよう命じた。
この停止により、アラムコの設備投資は今年から28年の間に約400億ドル削減される見込みだと同社は声明で明らかにした。昨年の設備投資額は約28%増の500億ドル弱で、24年は約480億-580億ドルと想定した。
アラムコのナセル最高経営責任者(CEO)は声明で政府の命令は「柔軟性を高める」ものであるとともに、ガス生産量の拡大や、液体から化学品の事業を成長させることに集中する機会をもたらすと説明した。