入浴料「大人550円」都内銭湯が4年連続で値上げ…銭湯を衰退から守る「規制」の“意外な歴史”とは
「規制の存在意義・合憲性」は時代によって移り変わるが…
しかし、銭湯をとりまく状況は、当時からさらに移り変わっている。 1989年の東京都の銭湯の大人料金は295円(30日合計8850円)だったが、前述のように、この8月から550円(30日合計16500円)となり、2倍近くに値上がりしている(東京都浴場組合公式HP「東京銭湯」より)。 このことをさして、昨今、銭湯は「ぜいたく品」になったとさえ言われることがある。 しかし、依然として、風呂なしの家に住むことを余儀なくされている人は存在する。また、銭湯の経営難と廃業・転業の問題も解消されたとはいえない。 他方で、業界あげての必死のPRや業者の経営努力が功を奏しているケースがみられる。新たに参入する業者も現れている。さらに、若い世代を中心に、銭湯の人気が復活してきているともいわれる。 一言で「業界の衰退」「ぜいたく品」などと断じることができない現実がある。 もしかしたら、公衆浴場の距離制限にも新しい意義や機能が生まれているのかもしれない。 江戸時代に花開いた銭湯の文化は、時代が目まぐるしく移り変わるなかで、根強く残り続けてきた。今年の夏休みは久しぶりに銭湯へ行き、広い湯舟にゆっくり浸かって、人生にとっての銭湯の存在意義や楽しみ方、これからの銭湯文化のゆくえに思いを馳せてみてはどうだろうか。
弁護士JP編集部