上昇したコメ価格 今後どうなる「米騒動」発祥の地 富山のJA全農県本部長が見通し
富山テレビ放送
原材料費や物流費の高騰を受け、食品やサービスなど幅広い分野で 値上げの動きが広がる中、この夏、都市部を中心に全国を騒がせたコメ不足。 今年の流行語大賞にもノミネートされた「令和の米騒動」を振り返り、 上昇したコメの価格の今後をJA全農とやまの県本部長に聞きました。 8月、横浜市のスーパー。 入荷したばかりの米が飛ぶように売れていました。 *スーパーの店員 「もともとは扱っていなかった商品を仕入れて、手を変え品を替えではないが、極力売り場に商品が並ぶよう努力を毎回毎回している状況」 *客 「Amazonも全部売り切れ、売ってない、基本」 Q自宅に今コメは? 「もう本当にない、ちょっとしか。だからきょうどうしようと思ってた」 嬉しそうにコメ袋を抱きかかえる客…。 今年の夏、都市部を中心に起こったコメ不足。 SNSでは千葉県のドラッグストアでコメがほぼ品切れとなっている状況を報告する人、埼玉県のスーパーでは大きな文字で「米」と表示された棚にパスタがずらりと陳列されている様子を報告する人もいました。 *客 「パスタ、ラーメン、うどん、ビーフンなど麺類で補うしかない」 「あぁ…お米売り場がカップ麺売り場になってた」 日本の主食、コメはどこに…。 「令和の米騒動」と言われる急激なコメ不足を受けて 価格は去年の同じ時期と比べ17%も上昇。 8月としては、農水省が調査を始めた2006年以降、 最高値となりました。 要因は、去年の猛暑の影響で精米後の歩留まりが悪かったことや 外国人観光客による需要の拡大、 さらに南海トラフ地震臨時情報の発表や台風の上陸で 消費者による買いだめが広がったことなどが挙げられています。 コメの卸や販売を手がける県内業者「矢郷米」。 この夏は、ネット販売で都市部からこれまでにない量の注文が入り 発送が追いつかなくなった為、 お盆過ぎから一部の注文の受付を停止したといいます。 8月、大阪府の吉村知事は「8割の店でコメの品切れが発生している」との 調査報告を受け、政府に備蓄米を放出するよう要請しました。 *大阪府 吉村洋文知事 「政府の備蓄米が約100万トンある。需給がひっ迫しているのであれば、 倉庫に眠らせておく必要はない」 しかし、政府は…。 *坂本哲志農水相(当時) 「コメの需給や価格に影響を与えるおそれがあるため、 (備蓄米の放出は)慎重に考えるべきものというふうに考えている」 新米が出回ると「令和の米騒動」は収束に向かいましたが こうした混乱は今後も起こり得るのでしょうか、 農業経済・農政に詳しい専門家は、こう見ています。 *宇都宮大学農学部 助教 小川真如さん 「(令和の米騒動は)また起こる可能性がある。大きな理由として こういう流通段階の混乱に対して国は対策を特に持っていない。 コメ政策の歴史の中で、もともと民間だったものが大正の米騒動をきっかけに 国が直接管理するようになり、そこから食糧管理法に移っていくが 市場メカニズムに任せ、国は最低限しか関わらない政策が進められてきた。 基本的に民間取引の混乱に国はよほどのことがない限り関与しない前提がある。 だから(令和の米騒動は)また起きうる」 *富山市のスーパー(10月) 「令和6年産の富富富を販売しております、いかがでしょうか」 県内のスーパーでは夏のコメ不足は限定的で、 都市部のような異常な品薄状態とはなりませんでしたが、 それでもコメの価格は去年と比べ、5キロで1000円ほど値上がりしています。 騒ぎの後で残ったのは上昇した「コメの価格」。 あらゆるものが値上がりする昨今、「コメの価格」は今後、 どうなるのでしょうか。 毎年、新米の生産者に前払いする仮渡し金、概算金の額を決めるJA全農とやまの 西井秀将県本部長は、この価格水準が当面続くとの見方を示しています。 *JA全農とやま 西井秀将県本部長 「これまで生産コストを大きく下回った販売価格だったことを踏まえて 今回はすごく急激に値上がりしている。そこに違和感を持っているのは 間違いない。ただJAグループとしては、この後も生産コストをはじき出して それに時々の需給状況を加味して概算金を設定していきたい」 【スタジオ補足】 コメの価格上昇についてJA全農とやまの西井県本部長は これまで生産コストを下回る価格でコメを出荷していた農家の立場としては 喜ばしいが、値上がりした価格でコメを買う消費者のことを思うと 複雑な面もあると話しました。 この先コメの価格はどうなるのか。 令和の米騒動を紐解きながら、食料安全保障を含め 今後の農業のあり方を考える際に知っておくべきポイントについて 11月10日(日)午前8時25分からの 『BBT報道シンそう富山』で詳しくお伝えします。
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