日銀・植田総裁が唱える「第2の力」は既に実現している?為替介入も超円安で利上げを迫られる悪循環の始まり
■ 上昇の兆しが見え始めた家賃の存在 かねて筆者は政府日銀の目指す「好循環」の実現は困難な一方、「悪循環」によるインフレに対処するために、利上げが必要になってくるとみている。 「好循環」は賃上げを好感して人々が消費をし、企業もそれによって売上高が伸びるので、また賃上げをするというイメージだろう。 確かに、今年2年目の春闘で平均5.20%の高水準の賃上げ(連合の第4回集計、4月26日発表)、定昇を除くベアでも3.5%程度が実現していることで、中小企業にも賃上げが広がっていくだろう。夏場以降には、賃上げが実際に人々の所得に反映される。 一方、円安に加え、地政学リスクの高まりで昨年末には落ち着いていた原油価格が再び上昇している。 これまで、物価を抑制してきた電気代・ガス代の補助金が5月で終了することに加えて、再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)の引き上げも効く。日々報道されているように好調なインバウンドの影響で宿泊施設や外食の価格も高騰している。日本人の節約志向、消費の冷え込みは続いてしまう。 【図表1】 ポイントは、日本の場合は米国と違って、需要が強くないことだ。企業による賃上げも、人手不足という供給要因に押されて、円安メリットを受けられない企業もやむなく選択している面がある。いずれ物価上昇に賃上げが追いつかなくなり、スタグフレーション的になると予想される。 さらに、これまで日本の物価が上がりにくい原因の一つとされ、動向が注目されていた家賃が上昇の兆しを見せている(図表2)。 【図表2】 これは今後、全体的な物価の底上げに影響してくる可能性がある。家賃上昇の背景にある地価上昇も、日本人の都市集中だけでなく外国人による不動産買いの影響があり、日本人の生活が豊かになっているとは言いがたい面がある。 また、日銀の利上げが円安に背中を押される形で早まるとしても、米国の利下げは想定以上に遅れそうで、日米の5%以上の政策金利差は続く。ドル円は一時的な円高はあっても、基調としてドル高円安が続いて、消費の重しになる。