拉致被害者の即時帰国を 横浜の高校で横田拓也さんと神奈川知事が特別授業
北朝鮮による日本人拉致問題について知る機会の少ない若い世代に理解を深めてもらおうと、県は13日、県立城郷高校(横浜市神奈川区)で特別授業を実施した。県として初の取り組み。1977年に新潟市内で拉致された横田めぐみさん=失踪当時(13)=の弟で被害者家族会代表の拓也さん(56)が講演し、参加した生徒約500人は真剣なまなざしで聞き入り、事件を風化させない大切さをくみ取った。 【写真で見る】拉致問題を考える特別授業で高校生と意見交換する横田拓也さんと黒岩知事 特別授業の冒頭では、横田めぐみさんが北朝鮮に拉致された事件を題材にしたドキュメントアニメ「めぐみ」を上映。拉致問題の経緯を共有した。 拓也さんは講演で、めぐみさんが拉致される前に撮った家族写真を投影しながら「本当に明るい、花に例えるとヒマワリのような姉だった」と紹介した。 拉致問題を「絶対に許すことのできない人権問題だと感じてほしい」と訴え、父滋さんはめぐみさんとの再会を果たせないまま亡くなり、母早紀江さん(88)ら被害者家族が高齢化し、事態は一刻の猶予もないことを強調。拉致被害者の早期帰国に向け「若い皆さんがこの問題を知っていただき、考えて行動することが大事だ」と呼びかけた。 「北朝鮮による拉致被害者を救出する知事の会」の会長を務める黒岩祐治知事は、フジテレビのキャスター時代から拉致問題と関わってきた経緯や、かつては「拉致」として報道できなかったことを説明。学生に向けて「皆さんが生まれる前に起こったことだが、自分事として考えて、こんな事件があったと理解し語り継ぎ、許さないという思いをつなげてほしい」とのメッセージを送った。 意見交換では「拉致問題について若い世代の関心を集めるにはどうしたらよいか」などといった生徒の質問に、拓也さんと知事が考えを述べた。 質問に立った2年生の生徒(17)は「かつては大々的に報道できなかったことを初めて知った。同世代や次世代に伝えていくことが私たちにできることだと思う。もっと調べて小学生の弟にも分かりやすく説明できるようにしたい」と話した。 今月10~16日の「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」に合わせ、県民に拉致問題への関心を喚起するための取り組みの一環。県によると、同校は文部科学省の人権教育研究指定校であることから授業が実施されることになった。
神奈川新聞社