船員ウェルビーイング、寝具でも改善の取り組み。新来島どっく、高級マットレスを25年度採用
【関西】海運各社が船員のウェルビーイング(心身の健康や幸福)実現に向けて取り組む中、寝具を改善し船舶の安全運航にもつなげる動きが出てきた。従来、船員用船室にはウレタン製マットレスが用いられてきたが、より快適な高密度連続スプリングの製品の採用が始まった。関係者によると、2024年に入り新来島どっく(愛媛県今治市)が建造する船舶で、フランスベッド(東京都新宿区)製の高密度連続スプリングマットレスの採用が決まった。 25年度引き渡し船からの採用となる。国内建造船では、船員用寝具にウレタンマットレスを用いるのが主流。こうした中、国内メーカーのフランスベッドが製造した「WGSマットレス」が、日本造船所の建造船で初採用された。 ILO(国際労働機関)の船内船員設備に関する条約(第92号)には、船員の寝台にバネ材の使用が明記されている。ただ、同条約を日本は批准しておらず、長らくウレタン材が用いられてきた。 ウレタン製のマットレスは比較的安価で手軽な半面、スプリングを用いたマットレスよりも硬さや柔らかさといった品質面で劣る。また、製品劣化が早いことや、臭いの面でも難点があった。
採用が決まった製品は高密度連続スプリングを用いたホテル仕様で、適度な硬さや内部に湿気をためない通気性の良さが特徴。スプリングを覆うクッション部分は抗菌・防臭・防ダニ機能、マットレスを覆う生地は除菌機能を持つ。 高品質なスプリングマットレス導入を通じ船員の「睡眠の質」向上が見込まれ、長い洋上生活での快適性改善が期待できる。また、船員交代で船室の利用者が替わることを踏まえ、抗菌・防臭・防ダニといった機能を通じ、より衛生的な空間の提供が可能となる。 一日のうち3分の1が睡眠時間ともいわれる中、心身の健康と睡眠は密接な関係にある。特に生活リズムが不規則となる船員生活で、睡眠の質の低下は安全運航の妨げにもなりかねない。 こうした中、快適性が高く製品劣化も少ないスプリングマットレスは、船主が造船所へ要望している居住環境改善にも合致すると業界関係者はみる。高品質な寝具の採用は、船員生活向上の象徴的な事例となりそうだ。 一般的にスプリングを用いたマットレスは10年以上使用可能という。また、船員の福利厚生の観点から、新造船だけでなく、既存船での入れ替えニーズが広がる可能性も期待できる。
日本海事新聞社