カズオ・イシグロさんの古希を祝福 研究者ら長崎から配信、魅力拡散へ研究会発足
長崎市出身の英国人ノーベル文学賞作家、カズオ・イシグロさん(70)が古希の誕生日を迎えた8日、イシグロ作品の研究者らが「祝古希カズオ・イシグロ誕生日会@長崎」をオンラインで開き、「カズオ・イシグロ研究会」の発会を宣言した。イシグロ文学の魅力を広めるため、研究者だけでなく一般の愛読者らも巻き込み、今後さらに組織を拡大して学会に発展させる考えも明らかにした。 イベントは、イシグロ作品の研究を進める都留文科大の加藤めぐみ教授や東京大学大学院の田尻芳樹教授らが企画。イシグロさんが5歳まで暮らした長崎市の生家跡地からビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」で生配信し、研究者や学生、一般視聴者を含め約100人が参加した。 生家跡に集った研究者ら5人は「ここはイシグロ作品の原点」と口をそろえ、加藤教授は出生地長崎を舞台としたデビュー作「遠い山なみの光」(1982年)が映画化されることに着目。原作に登場する長崎市内の「稲佐山」「浜屋デパート」「平和公園」などをスライドを使って紹介し、「ゆかりの地を世界のイシグロファンが回れる観光コースができればいい」と提言した。 同映画のプロデューサー石黒裕之さんがオンラインで参加し、エグゼクティブプロデューサーとして関わるイシグロさんについて「脚本を読んで(映画化に)快諾していただき、非常にサポーティブ。今の若い人たちに映画を作ってほしいという思いも伝わり、背中を押していただいた」などと述べた。 田尻教授らはイシグロ作品の魅力や最新の研究などについて解説し、イシグロさんの幼少期の写真も公開。今後、研究会としては来夏以降の映画公開に合わせてイベントを開く計画も説明した。 加藤教授は「イシグロさんはまだ70歳。これからの創作を応援する気持ちで誕生日会を開き、多くの方が参加してくれ非常にうれしい」とし、研究会については「新たな読者層が広がり、作品の魅力が日本全体に広がればいい」と述べた。