島根原発2号機運転差し止め、仮処分申請却下 住民は裁判所の「思考停止」を批判
救命設備のない船舶
そのすべてをここで詳しく説明することは難しいが、申し立てた住民の期待を大きく裏切ったであろう二つの点について述べたい。 まず一つは、原子力規制委員会への依存である。たとえば地震に対する安全性で、地震動評価の合理性については「原子力規制委員会による確認も経ているものである」「原子力規制委員会が(中略)審査において過誤、欠落があるともいえない」などと、原子力規制委員会の判断を重視している。 この点については記事の冒頭で触れたように申立人と弁護団が「行政追随の思考停止決定である」と批判しているが、その通りと言わざるを得ない。 もう一つは、避難計画の実効性について、何ら裁判所としての判断を下していない点である。 決定では、申し立てが示す「避難計画は実行性がないから、(中略)債権者らの人格権侵害の具体的危険が存在する」との主張について「上記事故が発生する具体的危険性があることがその前提となっているというべきである。しかるに、これまで検討してきたところに照らすと、上記事故が発生する具体的危険性について疎明があったということはできない。そうすると、債権者らの上記主張は、上記の前提を欠くものといわざるを得ない」などと述べ、避難計画の実効性に評価を下していない。 具体的な危険がないので、避難計画の実効性について判断する必要はない――。この驚くべき決定の論理には、原発立地自治体も、何度も決定で引用された原子力規制委員会のメンバーもさすがに腰を抜かすか、違和感を覚えるのではないだろうか。申立人と弁護団は声明でこう述べている。 「元日の能登半島地震によって、避難計画が地震による原発事故時には機能しないことが改めて明らかになった。(中略)本決定は、救命ボート等の救命設備を備えていない船舶の航行を認めるようなものであり、住民らを見捨てるものである」
佐藤和雄・「脱原発をめざす首長会議」事務局長