【ウクライナ防衛が台湾の守護に?】ロシアの中国「属国化」への傾倒と、日本も取り組むべき3つのこと
台湾新総統就任前後に起きた変化
「ウクライナを守ることは、台湾を守ることである」との考えは、とても時宜を得た的確な指摘である。この論文は、世界経済および地政学における台湾の重要性、中国の狙い等を明確に説明している。台湾の運命は、ウクライナと同様に、世界の平和と自由を守るために、民主主義国家が失敗してはならない重要な試練だと結論付けている。 台湾では、頼清徳・台湾新総統の就任式が5月15日にあったが、その前後にウクライナと台湾に関する重要行事が、目白押しであった。米議会におけるウクライナ支援が4月23日に決定し、習近平国家主席のフランス、ハンガリー、セルビア3カ国の訪問が5月5日~10日に行われ、第二次世界大戦の欧州での終戦記念式典が5月10日だった。 また、核使用に言及したプーチン大統領の演説が5月9日にあり、その後、プーチン大統領は、5期目大統領就任後初の外国訪問として、5月16~17日と中国を訪問した。
中国とロシアの行動を見ると、「制限のないパートナーシップ」に基づいて互いの膨張主義を強化して、民主主義諸国間の分断を進め、中・露にとって有利な国際環境づくりに務めているかのごとくである。 その一方で、中露関係は、プーチン氏にとって「屈辱的な関係」になりつつある。中国はロシアから石油・天然ガス等を輸入してロシア経済を支え、ロシアを「属国化」している。 中央アジア地域のカザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンはロシアから離れ、「中国・中央アジア運命共同体」を構築すると昨年首脳会議で宣言した。今や旧ソ連諸国で「ロシアの勢力圏」と言えるのはベラルーシぐらいである。 さらに最近、米国は、中国からの輸入部品を使ってロシアが軍需品生産を加速しているとみて、中国に対する金融制裁を検討中と報じられているが、中国企業に対する金融制裁は中露関係およびロシアの戦闘能力構築に大きく影響しよう。
日本が真剣に検討、協力すべきこと
台湾がウクライナから学んだ最大の教訓は、「自衛への強いコミットメントがなければ、同盟国からの支援も期待することはできない」ということであった。この点は、現在の日本が最も「心に刻むべき課題」である。 また、論文の最後では、中国の脅威を抑止するために、3つの点で民主主義国の支援を得たいと強調されている。3点とは、中国の威圧行動への適切な対処、経済統合そして国連決議の解釈であるが、日本政府は、この3点を真剣に検討し、協力すべきであろう。それが、台湾のみならず、日本の国益、地域・世界の平和と繁栄に資することになろう。
岡崎研究所