【ウクライナ防衛が台湾の守護に?】ロシアの中国「属国化」への傾倒と、日本も取り組むべき3つのこと
2024年5月9日付のフォーリン・アフェアーズ誌で、Joseph Wu台湾外交部長(当時)は、「ウクライナ防衛による台湾防衛」と題する論説で、ウクライナ支援は、中国・ロシア連合に対する民主主義諸国の力を高めることができ、中国の冒険主義に対する重要な抑止力にもなると主張し、その理由を明快に説明している。 【画像】【ウクライナ防衛が台湾の守護に?】ロシアの中国「属国化」への傾倒と、日本も取り組むべき3つのこと グローバル社会では、全ての国の安全保障は他国の安全保障と密接に結び付いている。民主主義諸国は、民主主義世界の分断を図る権威主義的勢力の攻撃を受けている。ロシアの侵略からウクライナを守る国際的支援が、台湾を守るための国際的関心と資源を奪っていると言う人もいるが、この考えは、世界の民主主義国家の地政学的利害が密接に結び付いている事実を過小評価している。 中国とロシアが緊密に連携している以上、民主主義国家は協調して行動することが不可欠である。ウクライナ支援を通じ、民主主義諸国は中国・ロシア連合に対する相対的な力を高めることができよう。 台湾は、米国議会が最近、ウクライナに対する米国の軍事支援継続を決定したことを歓迎する。このような民主主義を守るための決意表明は、中国の覇権主義に対する重要な抑止力となる。 ウクライナ同様、台湾防衛もまた世界的な意味を持つ。もし中国が台湾に侵攻した場合、世界経済は約10兆ドルの損失を被る、これは世界の国内総生産(GDP)10%近くに相当する。また、コンテナ船は台湾海峡を通過するため、国際的サプライチェーンにおいて、台湾は非常に重要である。 今年4月、台湾が過去25年間で最大の地震に見舞われた際も、中国は海峡を越えて軍艦や航空機を送り続けた。中国の国連代表団は、台湾の代弁者を装い、お見舞いに感謝した。 中国が軍事的、外交的、情報戦によって台湾の人々に恐怖を植え付ける。台湾人は国を挙げて中国に対抗する。
台湾は、中国からの安全保障上の脅威に対処するため、昨年、国防予算を約14%増加させ、約190億ドル(GDPの2.5%程)にした。また、徴兵制の訓練期間を4カ月から1年に延長した。 「自衛への強いコミットメントがなければ、同盟国からの支援も期待することはできない」。これが、台湾がウクライナから学んだ最も重要な教訓である。 台湾海峡の平和と安定は、台湾問題を国際問題として扱うことによってのみ維持できる。国際社会は中国の脅威を抑止するために、取り組むべきことが3つある。 第1に、中国による威圧への対応である。中国は台湾に対して、偽情報、選挙妨害、台湾海峡の中央線を越える戦闘機の出撃等の軍事的挑発を行っている。民主主義諸国は、このような行為には結果が伴うことを中国に示すべきである。 第2は、経済統合である。台湾と世界との経済的連携に、中国が口を出すことを許してはならない。台湾と米国は現在、貿易に関する米台イニシアティブの第2段階について交渉を進めている。 第3点は、国連決議の誤った解釈に反対することである。台湾の国連総会決議2758は1971年に採択され、中国議席を北京に与えたが、台湾が中国の「一つの省」とする中国の主張は間違いである。 民主主義諸国は、権威主義者が正義と自由を踏みにじるような世界秩序を誕生させることを許してはならない。今後数年間、台湾の運命は、ウクライナ同様、世界の平和と自由を守るために、民主主義諸国が失敗してはならない重要な試練となるだろう。 * * *