手ブレした映像や散らかった机。いま「 アグリー広告 」のパフォーマンスが高い理由
D2Cブランドのマーケティングチームは、次のメタ(Meta)の広告を選ぶため、多くの場合、毎週20~30本の新しいコンテンツをテストする必要がある。そして、これらのさまざまなテストのすべてでブランドから一貫して報告されているのは、いわゆる「アグリー(醜い)広告」と呼ばれているものが、もっともパフォーマンスが高いことが多いのだ。 パターンブランズ(Pattern Brands)の共同創設者で最高ビジネス責任者を務めるスーズ・ダウリング氏は、「我々の場合、成功してスケーリングできる広告の4つに3つは、より醜い、いい方を変えればよりオーセンティック(本物であること)な広告だ」と推定している。 アグリーな広告とはどのようなものだろうか。ほとんどの場合、見た目がひどいものではない。これは多くのマーケターが、従来型の広告のように見えず、ユーザーのソーシャルフィードに普通に出現しそうなコンテンツを表現するために使用している、包括的な用語だ。たとえば、手ブレしたカメラワークで、仕事中にお気に入りのスナックの袋を見せている動画などが当てはまる。または、散らかった机の上に商品が置かれ、その横に手書きの付箋のメモが貼ってある広告もある。これらの広告が非常に成功している理由はおそらく、この飾りのない美観であり、人々のフィードが競合ブランドの広告で常時あふれている今日の状況において、新興企業が目立つことがどれだけ難しいかを示している。 Nuts.comの広告
人々は作り込まれた映像に疲れている
「大衆への認知を促進するためのものがメタの外部に何もないなら、ブレイクスルーするのは極めて難しい」とニュースレターのノーベストプラクティス(No Best Practices)の創設者でeコマース成長アドバイザーを務めているアレックス・グレイフェルド氏は語る。「人々はある意味、精神的に広告をシャットアウトしてしまう。『これは今日で10回目のTシャツの広告だ』などと考える傾向がある」。 ブランディング代理店のタイニーウィンズ(Tiny Wins)の共同創設者で最高クリエイティブ責任者を務めるマティー・エアーズ氏は、このトレンドの原因が「人々は、作りすぎたインフルエンサーキャンペーンを売り付けられることに疲れている」事実だとしている。 マーケターは、これまでのマーケティングの原則の多くは依然として当てはまることも指摘している。最良の広告は今でも魅力的な引き、良いストーリー、そして確固とした売り文句があるものだ。何がアグリー広告なのかについて、マーケターやエグゼクティブの定義はそれぞれ異なっている。一部の人々はユーザー生成コンテンツと本質的に同じものだと考えているが、それが常に当てはまるとは限らない。 アグリー広告は多くの場合、従来の広告主が持っていたような視覚的な特徴がない。明るく照らされた背景の前に商品が置かれた写真ではなく、散らかった現実的な環境で使用されている商品の写真が使用される。誰かがスタジオでカメラに向かって直接話をしているユーザーの声をのせる代わりに、用事をしながら商品について気軽に話している人の光景を見せるかもしれない。 アグリー広告はミームのような見た目の場合もあるし、ブランドのカスタムカリグラフィーではなくインスタグラムのアプリ内フォントを使用しているという意味で「醜い」とされることもある。