ChatGPTでも、Geminiでもない…ネット情報を学習し尽くした「生成AI」の次にやってくる"進化系AI"の実力
■まったく導入しない企業のほうが少数派に このほか、銀行、投資サービス、小売、医療サービス、通信サービス、製造など、幅広い産業で生成AIの導入が進んでいる。 生成AIをまったく導入していない企業は、もはや少数派と言えるかもしれない。米ペンシルベニア大学のウォートン・スクール経営大学院はこのほど、マーケティングコンサルティング会社のGBK Collectiveと共同で、企業における生成AIの採用状況に関する調査報告書を発表した。 調査は従業員1000人以上からなる大規模企業を対象に、上級幹部800人以上に対して実施された。その結果、生成AIの週次利用率は2023年の37%から2024年には72%へと、約2倍に増加していることが明らかになった。特に、これまで採用が遅れていたマーケティングや人事部門での利用が顕著に伸びているという。 報告書によると、生成AIに対する経営幹部の受け止め方にも変化が見られた。導入初期には「好奇心」や「驚き」といった反応が主だったが、現在では「満足」や「興奮」といった、より生産的な感情に移行。また、AIに職を奪われるのではないかといった否定的な懸念については、当初と比べて弱まってきているという。 ■学習させてももう進歩しない…生成AIに見えてきた限界 課題もある。多様な業界で導入の進む生成AIだが、そのロードマップは順風満帆というわけではない。性能の向上が求められるなか、早くも成長に陰りが見えてきたとの指摘が出始めた。 現状、文章系の生成AIにおいて誤った回答を自信ありげに示す「ハルシネーション(幻覚)」が問題となっているほか、イラスト系AIが人間の指などの入り組んだ物体の描画を苦手とするなど、制限がある。性能向上は急務だ。 米ITメディアの「インフォメーション」は、OpenAIの次期主力モデル「Orion(オリオン)」の開発状況を報じた。OpenAIの従業員による内部テストでは、既存モデルを上回る性能を示したものの、GPT-3からGPT-4への進化ほどの飛躍は見られなかったという。特にコーディング分野では、従来モデルを安定的に上回ることができていないとされる。 この状況を受け、OpenAIは新たに基礎チームを設置。学習データの不足に対処すべく、AIモデルが生成した合成データを再び学習源として活用する次善策や、学習後のモデル改善に注力する方針だ。ただし、AI生成物の再学習によるデータ汚染と、学習品質の低下が懸念されている。同社はOrionのコードネームで知られる次期モデルのリリースを、来年以降に持ち越した。 ■まったく新しいAIの姿 米テックメディア大手のヴァージは、「AIは壁にぶつかっているのか? AIの専門家は皆、新しいモデルがスケーリングの壁にぶつかっていることに同意しているようだ」と題する記事を掲載。生成AIの限界を報じている。