【チャンピオンズC回顧】大外枠からの逃走劇でデータを覆したレモンポップ その勝因は序盤にあり
原優介騎手の胆力
2着ウィルソンテソーロは後方から運んだが、前半から余裕があった。おそらく、状態面になんら不安がなかったのではないか。スタート直後、行けないとみるや、ラチ沿いをとり、4コーナー出口までそのポジションでじっとしていた。徹底した距離ロス削減が最後の末脚につながった。 GⅠ騎乗2度目の原優介騎手は、ダート中距離の差しが上手く、自身が培った経験をすべて出した。セラフィックコールが動いて大外へ行き、スタミナをロスするなか、4コーナーの出口でやっと外へ動いた。ここまで我慢できる胆力は、関東の平場戦でよく目にする原騎手の素晴らしさ。もっと騎乗馬を増やしてほしいと個人的に願う。 にしても12番人気は盲点だった。JBCクラシック5着、その直前は交流重賞3連勝で力は十分証明していた。今年の正月、3勝クラスを勝ったばかり。ダート界はまさに戦国時代。この馬もまた今年の上がり馬だった。 3着ドゥラエレーデはレモンポップに並べそうで並べなかったが、3着は確保。自身が生きる競馬を選択したといえ、この辺の嗅覚はさすがムルザバエフ騎手だ。だが、ドゥラエレーデが無理をせず残った結果、レモンポップは楽になった。展開は難しい。だからといって3着に残れた同馬を責めるのも違う。一方、ドゥラエレーデは適性を判断しにくい難しい馬だ。とりあえず、ムルザバエフ騎手が乗ると走る。もっというと、外国人騎手が乗ったときは好走する。ホープフルS勝ち、UAEダービー2着の芝ダート兼用だが、今回でまたもダートへ舵を切りそうだ。 2番人気セラフィックコールは10着だった。ゲートの克服が第一だろう。現状では自力でレースを作れない。ダートの頂上決戦で展開待ちはそうそう出番が回ってこないだろう。スタート直後の反応も悪く、前半のダッシュ力を強化できれば、通用するのではないか。勝ち馬が逃げ切る競馬、差しにくい中京ダート1800mで後方まくりは厳しかった。だが、まだ経験が浅い3歳馬であり、まだまだこれからの馬だ。じっくり鍛錬して、また来年挑戦してほしい。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳