黒木瞳が苦労した映画『東京タワー』での役づくり
飯田)自分が思っていたものを、最後に現場で微調整する感じですか? 黒木)2人の会話だとすると、もう1人の役者の方が右にいると仮定して、セリフを覚えていたとします。そうすると、現場で左側にいらっしゃったらセリフが出てこないのですよ。そのため、監督にどう言われても対応できるように準備します。「歩いてください、座ってください、右を向いてください、左に来てください」など、何をおっしゃっても対応できるよう、家でシミュレーションするのです。 飯田)右にいるバージョンだったらこう、左のバージョンはこう、ということを家で練習する。 黒木)現場に行けば本番ではないですか。テストしたら本番ですから、そこで撮影を止めてはいけないので。 飯田)カットごとにすべてシミュレーションするわけですか? 黒木)そうですね。 飯田)膨大な数になりますよね。 黒木)舞台のときは1ヵ月ぐらいお稽古があるのでいいのですが、映像の場合はいろいろなシミュレーションを考えて準備します。 飯田)出来上がりしか観ていない素人としては、「素晴らしいな」と思いながら観るだけなのですが、その映像は氷山の一角なのですね。 黒木)でも、準備は大変ですが、楽しいです。