今年6月1日のチャンピオンズリーグ決勝では、R・マドリードがドルトムントを破って史上最多15回目の欧州制覇。今後、この大会形式によって、サッカー人気が凋落しないことを祈りたい。撮影／原悦生（Sony　α１使用）

　Jリーグは終盤に入っているが、アジアでは新シーズンがスタートした。アジアの頂点を争うAFCチャンピオンズリーグ・エリート（ACLE）が開幕したのだ。大会は、今シーズンから「新方式」を採用しているが、その仕組みは複雑怪奇。サッカージャーナリスト大住良之は「アンチ・サッカー的だ」と、警鐘を鳴らす。その意味するところとは? ■【画像】ヨハン・クライフも「ワンダフル」と絶賛!欧州制覇6度の世界最高のパサー

■不公平な大会形式は「UEFA」のサルまね

　いずれにしろ、新しい「ACLE」の大会方式は複雑怪奇であり、不公平であり、そして「アンチ・サッカー的」な方式と言わなければならない。だが、それはAFCが発明したわけではない。AFCは「サルまね」をしただけなのだ（こんな書き方をしたら、サルには失礼かもしれない）。 「お手本」は、もちろん、今季から大幅に大会方式が変わったUEFAチャンピオンズリーグ（UCL）である。こちらは、アジアのように東西に分けなければならない地理的条件があるわけではないので、もっと複雑怪奇だ。 　出場は36クラブ。それが1リーグを形成する。通常の方式（全クラブとホームアンドアウェーで対戦）なら1クラブの試合数は1シーズンに70試合になる。それをACLEと同様、「第8節」で切ってしまい、乱暴なことに、その時点で順位をつける。そして1～8位はラウンド16に進出。9～24位の16クラブはプレーオフ（2クラブずつ組み合わせ）を行ってラウンド16進出の残り8クラブを決めるのである。 　36クラブはこれまでのUEFAのクラブ大会の成績に応じて4つの「ポット」に分けられ、各クラブは4つのポットから2クラブずつ、計8チームとホームあるいはアウェーで対戦する。

■リーグステージの試合数は「1.5倍」に増大

　誰がこんな方法を考えたのだろうか。試合数を増やし、主催の欧州サッカー連盟（UEFA）の収益を増大させることだけを考え、サッカーの文化や歴史などを無視して計算ができる人物だったに違いない。あるいは人工知能（AI）の仕事だろうか。サッカーの文化が身についた人なら、36チームのリーグで8試合だけで順位を決めるなどという「アンチ・サッカー的」な発想に至るはずがない。だが、今や世界のサッカービジネスは、そうした人々がもてあそぶ世界なのである。 　ちなみに、リーグステージの試合数は、従来の4チーム×8グループの総計96試合に対し、36クラブ各8試合では144試合。1.5倍にも増えたことになる。 　繰り返すが、ACLEはその「サルまね」にすぎない。AFCという組織が、UEFAと同様、サッカーの文化や歴史を無視し、ただUCLに追随して見かけが派手な大会にしようということにしか考えがいかない集団であることは、これを見るだけでもわかる。