脚の筋肉は80歳で半分になる【筋肉博士・石井直方が解説】
深刻な「2025年問題」とどう向き合うか
筋肉を鍛えると言うと、ボディビルダーのように大胸筋や上腕二頭筋を強化したくなりがちですが、生きるためには足腰の筋肉を中心に強化することが重要です。 人間は「自在に移動する」ことで最も進化した動物として地球上に君臨してきました。そして、あまりにも進化した結果、今では筋肉が衰えて移動できないような年齢になっても生き続けられるようになってしまいました。 医療技術の発達や社会環境の改善によって、多くの人が有意義な人生を謳歌できるようになったのですから、それは悪いことではありません。ただ一方で、要介護人口の増加が深刻な問題になっていることも事実です。 団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になることに伴う「2025年問題」も深刻です。社会を支えるべき団塊ジュニア世代が親の介護を余儀なくされ、介護離職してしまう可能性もあります。それによって社会の活力が落ちてくると、負のスパイラルが拡大してしまうかもしれません。これは全世代に関わる問題であると言えます。 東京大学でも日本のスポーツの発展とともに、一般人の健康づくりへの取り組みにも力を入れています。介護予防のための有効な方法を研究しつつ、要介護の人たちを社会全体でどうサポートしていくかということも多方面から考えていく必要があります。 介護予防には、まず少しでも筋肉の衰えを遅らせ、自分の力で歩けるようにしておくことが大切です。加齢によって筋肉が衰えてしまうのは万人共通なので、国民全員が自分自身の問題として早い段階から手を打っておく必要があります。 現実問題として、衰えてからトレーニングを開始するのは難しいと思います。だからこそ、動けるうちに少しでも筋肉を鍛えておくことが望ましいのです。 前回も書いたように、運動をすることで認知症予防につながる物質が出てくる可能性があることもわかってきています。体を動かす機会が減っている現代ですが、運動の意味は、むしろ昔よりも大きくなっていると言えるでしょう。