<南アフリカ>崖っぷちの毎日 ── 高橋邦典フォト・ジャーナル
ヨハネスブルグの中心部にあるヒルブロウ地区。泥と埃で汚れたジャケットを身にまとったサイモンという名の一人の少年が、一緒にいたソーシャルワーカーに助けを求めてきた。 「仲間が死んだ。どうしたらいいかわからない」 寝床にしている空き地で、突然痙攣をおこし、息絶えたという。仰向けになった遺体に被せられた毛布には、落葉がはりついていた。
「栄養失調で弱った身体にシンナーの吸い過ぎが原因だろう」 ソーシャルワーカーが推測した。珍しいことではないようだった。 この年すでに、ヨハネスブルグのストリート・チルドレンの数は2千人以上に膨れ上がっていた。彼等は身を守るために徒党を組み、店の前で買物客の駐車を手伝ったり、信号待ちするドライバーに物乞いをして小銭を得、なんとか生き延びていた。しかしその日の食べ物にさえ事欠く暮らしのなか、多くの子供達は犯罪に手を染めたり、現実逃避のために吸引するシンナーのために体を病んでいた。一歩間違えれば、サイモンの仲間のように、あの世行きだ。延々と続く崖っぷちを渡り続けている...子供達は、そんな毎日を生きているようにみえた。