「描きたい俳優はジェシー・プレモンスやティルダ・スウィントン」ヒグチユウコが語る『映画とポスターのお話』
トーマシン・マッケンジーを描くのが楽しかった
――オルタナティブポスターを作る時に、積極的に描きたいと思う俳優はいますか? ヒグチ 描きたくなる俳優は確かにいるんですけれども、実際その役者がメインで出ている映画だとしても、あえて描かない場合もあります。 『ラストナイト・イン・ソーホー』では、アニャ・テイラー=ジョイは大変魅力的なのですが、「描きたい」となるとちょっと別になりますね。この時でしたら、トーマシン・マッケンジーを描くのが楽しかったです。 若くて可愛らしい、あるいは美しい顔はとても魅力的なのですが、年齢は高めの方が描きたいと思うことが多いです。 ジェシー・プレモンスやマハーシャラ・アリ、國村隼、ティム・カリー、ティルダ・スウィントン、あと何度描いても嬉しいミア・ゴス。挙げてみると老若男女でしたね。こちらもキリがないです。
ヒグチユウコに影響を与えた映画作品
――ご自身の制作に、映画作品が与えた影響は大きいのでしょうか? また、「映画を撮りたい」と思ったことはありますか? ヒグチ 映画は一番すんなり触れることができ、ストーリーもあって、音もあってと、とても情報量の多いものなので、幼少期から大きく占めていたと思います。 ただ、映画の仕事というのは、私には少し大きすぎます。やはり自分にできるのは絵を描くくらいでしょう。なので末端でも良いので、仲間に入れて欲しいと言う気持ちからポスターを書きたいわけです。 ――本書では、フェデリコ・フェリーニ監督の『悪魔の首飾り』から大きな影響を受けたと書かれていますが、ほかにも影響を受けた作品はありますか? ヒグチ 影響を与えてくれた映画は、ダリオ・アルジェント監督の『サスペリア』がとても大きいと思います。
テレビ放送される映画作品に感じる変化は?
――ヒグチさんは、幼い頃のテレビ放送で映画に触れた経験があるそうですが、昨今は子ども時代に観るとトラウマになりそうな映画はあまり放送されなくなった印象もあります。どう感じていますか? ヒグチ そうなんです。うちにはテレビがないので、昨今のテレビ事情が全くわからないのですが、今の方たちはサブスクで観たりもするので、逆に幅は広がったんじゃないかなぁと勝手に思ってます。ただ倍速で観ることもあると聞いた時は、衝撃でした。 私が『サスペリア』や『悪魔の首飾り』に出会った事件も、人によってはトラウマ要素があったかもしれないので、万人に全てをお勧めしたいとは思いませんが、「向こうからいきなり飛び込んでくる、そんな出会いもあると良いのでは?」と個人的には思います。「ちょっとの冒険もたまにはいいよ!」です。 SNSもございますし、誰でも簡単に意見ができるようになった昨今では逆に息苦しいことも多いです。一方で、良くなったこともすごく多いので、単に時代の流れなんでしょうね。