“誤訳”で逮捕され「人生壊れた」女性も…司法通訳人の実態と課題 25年超携わる男性「間違いや訳し忘れある」
■専門家「スキルによって誤訳は起きうる」 司法通訳人の質を保つには
司法通訳を研究し、自身も司法通訳として活動する名古屋市立大学の毛利雅子教授は、現状の制度では“通訳人のスキルによって、オクイさんのような事件は他にも起きうる”と指摘する。 名古屋市立大学の毛利雅子教授: 応募して、(司法)機関に「この人なら大丈夫だろう」と判断された場合は、(通訳人として)採用されてしまう。それぞれの語学のレベルはまちまちで、言語によってもまちまちですから、果たしてその人が本当に司法通訳をするに値するだけの運用能力を持っているかどうかは、甚だ疑問なところがあります。 毛利教授は「司法通訳人」の質を一定に保つためにも、海外で実施されている公的な資格や認証制度、通訳人への研修制度を導入すべき、と提案する。 名古屋市立大学の毛利雅子教授: アメリカやオーストラリアは、認証制度が確立されています。言語運用能力だけでなく、倫理観のテストもある。アメリカだと、一定期間置くと、継続教育に通らないと次の登録ができないシステムになっている。そういう制度を(日本も)作るべきだと思います。 司法通訳は、専門性が高く必要不可欠な仕事でありながら、なり手が年々減っている。 無実の罪で逮捕され、裁判で無罪判決が出るまで2年間にわたり勾留されたオクイさんは今でも、「すごい辛かった。あの頃に戻りたくない。私の頭から消したい」と話している。 言葉の壁により冤罪を生みかねない状況は、一刻も早く解消する努力が必要だ。
■一般的な相場は1万5000円 司法通訳で収入得るのは難しい現状
司法通訳人の「手当て」は事件ごとに異なるが、1回の裁判当たり一般的に1万5000円が相場とされている。 司法通訳歴25年の橋本さんは「現状では司法通訳だけでは安定した収入を得られるのは難しく、“なり手不足”は解消しないのでは」と話している。 最高裁によると、2022年度に刑事事件で使われた言語は、ベトナム語・中国語・タイ語など32の言語があった。名古屋市立大学の毛利教授は「地方に行くと、元々外国語を使うような仕事もなければ、通訳人がいない可能性がある」と地域差について指摘している。 2024年12月13日放送 (東海テレビ)
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