“誤訳”で逮捕され「人生壊れた」女性も…司法通訳人の実態と課題 25年超携わる男性「間違いや訳し忘れある」
■「通訳は機械と違う」必要とされる司法通訳人 なり手は年々減少…
オクイさんの人生を揺るがしたのが、事件や裁判の際に外国人の容疑者や被告を通訳する「司法通訳人」だ。国際化が進む今、欠かせない存在となっている。 愛知県に住む橋本さん(仮名・65)もその1人だ。事件や裁判という秘匿性の高い内容を扱うため、匿名で取材に応じてくれた。ポルトガル語を操り、25年以上にわたって、裁判での通訳に加え、警察や検察の取り調べの通訳に携わってきた。 橋本さん: あまり知られていない仕事ですし、確立されていませんからね。 司法通訳の中でも裁判を担当する「法廷通訳」は、裁判所のホームページで募集されていて、希望すれば誰でも応募可能だ。面接を行い、適正があると認められれば、「通訳人候補者」として名簿に登録される仕組みになっている。 報酬は、裁判所の場合は具体的な金額は明らかにしていないが、事件の内容や難易度に応じて決められる“通訳料”と“移動費”が支払われる。 最高裁判所によると、名簿に登録されている「法廷通訳人」の数は、10年間で2割ほど減っている。しかし、外国人が被告となった事件で、通訳人がついた被告は過去10年で4割以上増加していて、司法通訳人の役割はますます重要になっている。 司法通訳人の橋本さんのこの日の仕事は、ある事件で逮捕された外国人の容疑者の通訳だ。仕事の依頼が入ったのは「前日」だ。 橋本さん: (Qきょうの仕事は?)愛知県警の要請で被疑者の取り調べの通訳です。内容は詳しく聞かされていないが、警察としては1日かけて取り調べをしたいと。「今すぐ来てくれませんか」とか。夜中呼ばれることもあります。通訳人はそういう宿命にあります。 司法通訳人は、通訳の能力はもちろん、法律などの専門用語も飛び交う中で正確に訳すことが求められ、ミスは許されない。しかし、実際には間違った通訳をしてしまうケースもあるという。 橋本さん: 通訳というのは機械と違って、エネルギーを消耗していると電池が切れていくんですね。もし間違った通訳をしたり、通訳し忘れた時は、気付いた時点で自分で申し出て、「裁判官、すいません」と。それが通訳に求められる1つのこと。