世界の平和構築には意思決定層に女性が必要 国連3委員会の最新動向報告
今年は、国連総会で女性差別撤廃条約が採択されて45年。10月の女性差別撤廃委員会では、条約の実施状況に関する日本政府報告の審査がなされる予定だ。また、来年は、1995年の第4回世界女性会議で採択された「北京宣言」から30年。同宣言は女性のエンパワーメントのための戦略などを示しており、「北京+30」として、これまでの取りくみ状況に関する世界全体のレビュー(調査、研究)が行なわれる。
節目となる重要なイベントを前に、国連の女性関連3委員会の最新動向を聞く会合「国連とジェンダー2024」(主催:国際女性の地位協会)が6月30日、東京・文京区の男女平等センターで開かれた。報告者は、第78回国連総会第三委員会日本政府代表顧問の紙谷雅子・学習院大学名誉教授、第68回国連女性の地位委員会(CSW68)日本代表の大崎麻子氏、国連女性差別撤廃委員会委員の秋月弘子・亜細亜大学教授。会場は約70人が参加し、情報を求める熱気にあふれた。 昨年秋に実施された第三委員会は、社会開発や人権を扱っており、一般討議を経て採決に至った女性関連決議は三つ。女性移住労働者への暴力への対処と、農村・山村・漁村の女性たちの状況改善への努力、そして北京宣言後の進捗状況のフォローアップだ。紙谷氏は「いかに女性移住労働者が保護されていないかはILO(国際労働機関)も問題にしているが、日本政府が、うちは関係ないという顔をしているのが悲しい」と発言。第三委員会は女性の人権に特化していないが、「女性のことを考えずに議論・決議するのは不可能だと思った」と振り返った。 大崎氏は、グテレス国連事務総長がCSW68の開会式スピーチであげた「女性の権利への脅威として二つの深い懸念事項」に注目を促す。一つは、家父長制の復活や権威主義・ポピュリストの台頭による、女性の自由やリプロダクティブヘルス(性と生殖に関する健康)への攻撃。二つ目は、白人男性中心のデジタルテクノロジー(特にAI)分野における性別・人種・能力などの多様性の欠如が多分野に及ぼす影響だ。「世界的にもこの二つは非常に危機意識を持たれている」と大崎氏は指摘する。 CSW68の優先テーマは「ジェンダーの視点からの貧困撲滅、機構強化、資金動員によるジェンダー平等達成と女性・女児のエンパワーメントの加速」。各国による非公式協議の結果、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて資金動員・調達にジェンダー視点を統合することなどが盛り込まれた合意結論が採択された。