【大学野球】「根気強くやります」新たな亜大野球部の構築へ…期待がかかる正村公弘新監督の手腕
最後の仕事としてトップレベルで指導
亜大は昨年6月14日、生田勉前監督が退任。亜大の事務職業務に当たっていた野球部OBの鈴木一央氏が監督、山下達也氏がコーチとして8月1日に就任した。秋の東都大学リーグ戦は開幕から3カード連続で勝ち点を落とす苦しい展開だったが、残る2カードを持ち味の粘りで勝ち点奪取、一部残留を果たした。鈴木監督と山下コーチは母校愛にあふれた熱血指導で、最大のピンチを救ったのだった。 亜大サイドが正村氏に就任要請したのは昨年10月末。八戸学院大とは65歳まで、再雇用としての任期が残っていた。「(定年である60歳のタイミングで)後進に道を譲ったほうが良いと、考えることもありました……。熟考の末、お受けすることにしました」。勝負師、野球人としての一つのロマンがあった。 「東都の野球をのぞいてみたいと思いました。この年齢ですので、チャレンジする機会は、もうないかもしれない。最後の仕事として、トップレベルで指導してみたいと考えました」 1月9日の全体ミーティングを終え、翌10日に初指導。週末までには、約80人に及ぶ部員との個人面談(約20分)を実施する予定だ。 「まずは全学生の声を聞いた上で、役員(幹部)で集まり、日々の学生生活におけるルールを作っていきます。学生たちで決める野球部の規則をしっかり守りながら、一人ひとりが自律し、主体的に動ける野球部にしたい」 かつて亜大部員の頭髪は丸刈りが原則だったが、鈴木前監督は昨秋の就任以降、学生の考えに一任している。正村監督も「強制することはない。ルールの中で、自由にしてもらって構わない」との方針を打ち出している。 部運営の中核を担う正高奏太主将(新4年・狭山ヶ丘高)と林大陸学生コーチ(新4年・星稜高)は正村監督の考えを十分理解し、新体制もスムーズに運びそうだ。正高主将は23年に学生コーチを務め、リーダーシップ抜群。控え選手、裏方の思いも熟知しており、結束力のあるチームに仕上げてくるはずである。 亜大のモットーは「全力疾走」。 「1958年の創部以来、守ってきた伝統は継承すべき。やり続けることは難しいですが、亜細亜大学には、それしかない。ハツラツ、キビキビ、礼儀正しさを追求していきたいです」 今春の目標を聞くと、正村監督は「一部残留」と言ったが、すぐに軌道修正した。 「先を見ずに、一戦必勝。そこを積み上げていくことが大事です」 先輩からの教え、シキタリを大切にしながら、新たな亜大野球部を構築する。「根気強くやります」。ベテラン指揮官の手腕に注目である。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール