「メイン通りのレベルは飛田新地に引けをとらない」インバウンドも熱い視線…大阪・松島新地徹底ガイド
飛田新地に次ぐ〝料亭街〟夕刻の松島新地を歩く
今、大阪の〝ちょんの間〟が熱い。来年4月から半年間ほど開催される「大阪・関西万博」が近づくにつれて、インバウンドの増加に拍車がかかる大阪市。〝日本一の料亭街〟飛田新地の国際化ぶりはよく知られているが、飛田新地に次ぐ規模を誇る〝密集エリア〟松島新地にも外国人客が訪れている。 【貴重画像】すごい…料亭が立ち並ぶ松島新地の中心「雰囲気ありすぎ」メイン通り写真 6月12日(水)の夕方18時ごろ、松島新地を訪れた。最寄り駅は、大阪メトロ中央線の九条駅、または阪神なんば線の九条駅。最も近いのは中央線の九条駅の6番出口で、そこから徒歩で2~3分ほどとなる。阪神なんば線の九条駅からは1番出口もしくは2番出口を出て、徒歩5分ほどで到着する。 メイン通りは2車線あり、対向車が余裕を持って行き交えるほど道幅が広い。そのうえ料亭の建物が大きく、店と客の数が少ないので、街全体がゆったりとしている。飛田新地は観光客で賑わっていて落ち着かないが、松島新地は飛田新地ほど客が多くなく雰囲気がゆるやかなので、じっくり楽しむことができる。店と店との間に距離があり密集しすぎていないうえ、飛田新地のように混雑しておらず、せわしなくないのだ。 外国人客はチラホラ。韓国人の若者4人組、中国人のオジサン4人組と2人連れ。金髪の白人もいた。ケント・ギルバート似のメガネを掛けた中年男性と、長い髪を後ろで束ねた〝チョンマゲ〟スタイルのケビン・コスナー似の中年男性。どちらも単独で新地の中をグルグルと回っている。〝外国人客が少ない〟というより、〝客自体が少ない〟。早朝から深夜まで来客が多過ぎて〝連日お祭り状態〟の飛田新地が特殊なのだ。 松島新地で料亭の女性を見ていると、肩の力が抜けて、気持ちが和む。目が合うと、かわいらしい女性が〝ニコッ〟と笑ってくれるので、癒やされる。軽く手を振りながら笑顔を向けられると、ほがらかな気持ちになる。すごい美人に見つめられてドギマギし、目が離せずに吸い込まれそうになる飛田新地とは、一味違う魅力がある。 松島新地の料亭に勤める女性のレベルは高い。特にメイン通りの中心部は、飛田新地に引けをとらないほどだ。飛田新地同様、コスプレも流行っている。華やかな水色の着物、阪神タイガースの黄色いユニホーム、サッカー日本代表の青いユニホーム、胸元が大きく開いたグレーの〝童貞を殺すセーター〟、スーパーマリオの衣装を着た女性もいた。ケモノ耳も流行っており、黒い耳飾りを付けた女性が2人いた。 松島新地ではメイン通りでも、コスプレより、胸元の開いた白いワンピースなど、セクシーだが落ち着きのある大人っぽい衣装を着た女性が多い。コスプレがよりどりみどりで〝強烈な刺激がいっぱい〟の飛田新地のメイン通りや青春通りとは、少し違う。 日暮れ時に、一般の高齢女性3人がメイン通りを歩いていくと、2人の女性がサッとウチワで顔を隠した。このあたりは飛田新地と同じである。盗撮防止や〝冷やかし〟対策で、ウチワを使っている。 新地内を歩き回って気がついたのは、松島新地には、飛田新地のような公衆トイレ、休憩場、時計台、専用の駐車場、案内マップがないということだ。料亭があるのは〝普通の街の中〟である。民家やマンション、工場や工事現場、クリーニング店や美容室、飲食店などと料亭が混じり合っている。住宅街との境目が極めて曖昧で、非常に混沌としている。何から何まできちんと整備され、英語のマップまである〝国際的なアミューズメントパーク〟と化している飛田新地とは、かなり違っている。 飛田新地が〝整備された都市公園〟なら、松島新地は〝天然の野性味あふれる自然公園〟のようだ。飛田新地が〝映画の世界のような見事に設計された歓楽街〟なのに対し、松島新地は〝日常空間の延長にある路地裏の歓楽街〟といった感じである。また、〝地図がないので出口が分からない迷路〟〝道筋を俯瞰しづらいのでなかなか抜け出せないダンジョン〟のようでもある。同じ大阪市内の顔見せちょんの間街でも飛田新地とは雰囲気が違い、荒々しくて〝ワイルド〟だ。 ◆松島新地の基本情報 歴史、地理、料金、遊び方 松島新地は、大阪でも飛田新地に次ぐ店舗数を誇る料亭街であり、約80軒が営業している。飛田新地が約160軒なので、半分の規模となる。大阪市西区九条1丁目・西区本田(ほんでん)2丁目のエリアの広範囲に店が点在している。「メイン通り」「マツキヨ通り」「駅チカ・郵便局エリア」「メイン裏エリア」「神社裏通り」「本田エリア」の6つの地域に分けることができ、〝表通り〟であるメイン通りとマツキヨ通りは特に旧赤線街の風情が残るうえ、女性のレベルが高い。他の4つのエリアはいわゆる〝裏通り〟であり、表通りに比べ「女性のレベルはやや下がる」と言われる。15分ほどあれば、街全体を見て回ることができる。 「メイン通り」は阪神高速16号大阪港線の高架下にあたる中央大通りから、大阪市を東西に走るみなと通りに面した茨住吉神社の裏に突き当たるまでの間を貫く通りとなる。松島新地の中では、最も人通りが多い。 「マツキヨ通り」は新地の南の〝九条ナインモール商店街〟というアーケード商店街にあるドラッグストア『マツモトキヨシ』から北北東に向かう通りであり、100メートルくらいの間に10数軒の料亭がある。 「駅チカ・郵便局エリア」は大阪メトロ中央線の九条駅にほど近く、電車で遊びに来た客にとって真っ先に目に入るエリア。大阪九条郵便局の近辺に10数軒の料亭があり〝郵便局裏手通り〟とも呼ばれる。 「メイン裏エリア」はマツキヨ通りの一本東側にある路地であり、狭い道の両側に10軒弱の料亭がひしめく。 「神社裏通り」は茨住吉神社の裏手の通りで、4軒ほどの料亭が営業している。 「本田エリア」は松島新地料理組合前を横切る道路(通称〝料理組合通り〟〝組合前通り〟)の北側となり、16軒ほどの料亭が点在している。〝大の字交差点付近〟〝工場筋〟と呼ばれることもある。 女性が顔見せしている料亭を見て回り、気に入った子がいれば店に上がるシステムだ。実物の女性を見て選べるということで、客側からすると安心して遊べるのだという。飛田新地は1軒に1人が座っているが、松島新地は2~3人が一緒に座って同時に顔見せしている店が多い。店や時間帯によっては1人で顔見せしていることもある。 料亭は午前10~11時ごろからポツポツと開店し始め、15~17時にはほとんどの店がオープンする。本格的に賑わうのは夕方18時ごろから。深夜24時に一斉に閉店となる。23時59分までに入店すれば遊べる。 料金は20分1万3000円、30分1万8000円と、10分きざみで5000円ずつ上がり、60分コースまである。メイン通りでは主に30分コースからとなっているが、20分コースから案内している店もある。料亭のおばちゃん曰く「20分から上がれるところ、少ないんやで」とのことだ。20分コースと30分コースでは、料金が飛田新地より3000円安い。リーズナブルなので、客の7~8割は20分コースか30分コースで遊ぶ。 飛田新地との大きな違いは、プレイの前後にシャワーを浴びることだ。清潔かつサッパリした状態でプレイできるという。シャワーがある分、20分だと時間がギリギリになったり足りなくなるので、30分コースの利用が多い。 飛田新地に比べて容姿やスタイルは劣る女性が多いが、愛嬌があり、サービスの良い女性がたくさんいる。親しみやすく、フレンドリー。派手な女性はあまりいないが、風俗や水商売にいなさそうな純朴でかわいい女性がいる。容姿だけを求めていない人にオススメだ。 前身の松島遊廓は明治2(1869)年開設と、大正7(1918)年開業の飛田新地よりも長い歴史を持つ。昭和20(1945)年3月の大阪大空襲による焼失により現在の場所に移転し、戦後の赤線時代を経て料亭街になった。現在も往時を思わせる建物がちらほら残っている。大正から昭和にかけてが最盛期であり、娼妓数は東京・吉原をしのぐ勢いだった。戦災で移転している関係で、飛田新地にある『鯛よし百番』のような100年もの歴史がある妓楼建築は見当たらない。 近隣の目立った観光名所は、〝京セラドーム大阪〟というドーム球場のみ。近くに通天閣やあべのハルカス、天王寺動物園などがある飛田新地とは、このあたりも違っている。アーケード商店街〝九条ナインモール商店街〟は一般の健全なもので、飛田新地の近くにある飛田本通商店街のような猥雑さはない。西成のような〝ドヤ街〟も、もちろんない。こうして比べてみると、飛田新地の周辺が、稀に見る〝異界〟であることがよく分かる。 後編『〝テーマパーク〟飛田新地にはない〝秘境感〟日常空間に溶け込んだ色街 大阪・松島新地の夜と昼』はこちら 取材・文:生駒明 ペンネームはイコマ師匠。風俗情報誌『俺の旅』シリーズの元編集長。徹底した現場取材をモットーとし、全国の歓楽街を完全踏破。フリーの編集記者として、雑誌やサイトの記事、自らのSNSなどで『俺の旅』を継続中。著書に『フーゾクの現代史』『ルポ日本異界地図』(共著)。
FRIDAYデジタル