日銀利上げが射程圏、経済・物価は想定通り-今月なら35年ぶり年3回
大半のエコノミストが来年1月までの追加利上げを見込む中で、金融政策予想を反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS) 市場では、日銀が12月会合で政策金利を0.5%に引き上げる確率が、11月初めの30%程度から今月2日には一時7割近くに上昇。利上げ観測の高まりから、2年国債利回りは一時08年10月以来となる0.625%まで上昇した。
12月会合の結果が公表される数時間前には米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を発表し、4年半ぶりの9月、11月に続く3会合連続の利下げを決めるかが焦点となる。岡三証券の中山氏は、米国が利下げする一方、日銀が現状維持となれば日銀の慎重さが目立つことで円安が進行するかもしれないとし、「困惑を呼び、市場を不安定にする可能性もある」とみている。
トランプリスク
国内の経済・物価・賃金動向が金融政策の正常化を促す一方で、トランプ次期米大統領の政策の影響を含めた海外経済の不確実性はむしろ高まっている。トランプ氏は早速、中国からの輸入品に追加で10%、メキシコとカナダに25%の関税を課すと表明した。今後もどのような政策を打ち出してくるのか、来年1月の就任を控えて警戒感が強まりやすい。
植田総裁は先月18日の講演で、賃金と物価の好循環の強まりが見通し実現の鍵を握ると指摘した。25年の春闘を巡っては、連合は今年と同じ「5%以上」を賃上げ目標に掲げており、政労使の枠組みにおける賃上げに向けた環境整備も進める。今年に続く高水準の賃上げを既に表明した大企業もあるが、世界経済の先行きに一段と不透明感が広がれば、賃上げ機運の高まりに冷や水を浴びせかねない。
また、少数与党となった第2次石破茂内閣でキャスチングボートを握る国民民主党の玉木雄一郎代表は、日銀は来年3月まで利上げすべきではないとの見解を表明している。石破首相は先月29日の所信表明演説で、政権運営に関して「他党にも丁寧に意見を聞き、可能な限り幅広い合意形成が図られるよう取り組む」と配慮を示した。