『虎に翼』桂場の“甘党設定”が生み出す物語 松山ケンイチが担う“バランサー”の役割
梅子(平岩紙)の“あんこ修行”を支えた桂場(松山ケンイチ)
さらに彼の“甘党”の設定は、現在では新たなドラマを生み出していたりもする。 寅子の学生時代からの同志である竹原梅子(平岩紙)は「竹もと」の後継者になるべく、“この店の味”を生み出せるよう、修行に励んできた。そこで味の「検定」を行っていたのが桂場だ。彼が無言で首を左右に振るさまは、これまでにたびたび映し出されてきた。そうしてついに、第23週「始めは処女の如く、後は脱兎の如し?」の第115話にて、「合格」が出たわけだ。 梅子は家庭の問題で法曹界を歩むのを断念しなければならず、さらには夫の遺産相続をめぐって家を出ることとなった。それからは学生時代の同期の山田よね(土居志央梨)と轟太一(戸塚純貴)とともに暮らしながら、「竹もと」の味を継承するため奮闘してきたのだ。しかも、一人前の寿司職人となった道男(和田庵)とともに、寿司と甘味が楽しめる「笹竹」をはじめることになる。桂場というひとりのキャラクターの設定が、ここまで物語を発展させるとは……。脚本の妙に唸らずにはいられない。 桂場は“物語の序盤から登場し続けている人物”だと先述したが、これはつまり、演じる松山が放送初期の頃から本作を支えてきたということ。脚本の妙は、それを体現できる優れた演技者がいなければ成立しない。 桂場等一郎の“甘党”という設定は、あと3週の『虎に翼』にどのような作用をもたらすのだろうか。
折田侑駿