次々と欧州へ。日本サッカーのブランド力向上の半面、確実に進むJリーグの空洞化。打開策を見出せなければ、代表との格差はますます――
才能が流出していく状況は、欧州でもわずかな例外を除けば変わらない
フットボーラーの寿命は短い。最近は三笘、守田英正、古橋享梧らのように大卒選手の欧州進出も目立つが、早く現地に順応した方が可能性も広がるのは目に見えている。逆に大卒で獲得してきても、数年間で欧州進出が見えてくる現況は、Jクラブの強化担当の頭痛の種かもしれない。 だが、日本に限らずトップレベルの才能が流出していく状況は、欧州でもイングランド、スペイン、ドイツ等わずかな例外を除けば変わらない。既に1998年に自国開催のワールドカップで初優勝を遂げたフランス代表の主力の大半は、セリエAでプレーしていた。 では欧州の2番手以下の国々では、なぜ空洞化現象に陥らないのか。現在オーストリアリーグのザンクト・ペルテンでテクニカルディレクターを務めるモラス雅暉氏に話を聞いたことがある。 オーストリアでは「毎年4~5人に1人程度の選手たちが外国へ移籍していく」そうだ。しかし出て行く分を新しい才能が埋める仕組みが整っている。同国ではトップチームが1部なら、セカンドチームも最高2部リーグまで上がれる。また、業務提携制度が進み、シーズン中でも貸し出した選手を必要な時には戻すことも可能なので、開幕時には貸出先の2部でプレーしていた選手が、後半は本来所属する1部で活躍することもあるという。 日本では高卒から大卒まで(18~22歳)の実戦経験を補う明確な仕組みが確立されていない。それが高校やユースを経た選手たちの海外流出の要因にもなっているわけだが、その結果、Jリーグは欧州2番手クラスの国々に比べて年齢層が高くなっている。一時はJ1の3クラブがU-23チームをJ3に参戦させたが消滅。最近は育成型のレンタル制度が活用されるようになっているが、ベテラン選手との共存の仕方も含めて過渡期の感が否めない。 日本の若い才能は、欧州から青田買いの対象になるほど悪くはないのに、依然として多くのJクラブはチームの成績を重視するあまり、経験値優先に走りがちだ。もちろん町田や神戸のように、欧州から戻る選手たちの有効活用も今後の重要なテーマだが、やはりアジアの近隣諸国への展開も視野に入れた業務提携システムや、セカンドチーム活動の見直し等は、せっかく確立されている育成システムを有効活用するためにも急務だろう。 地上波放送がほとんどないJリーグは、4年に1度、五輪という大々的な露出の場を持つ様々なアマチュア競技と比べても、国民的な関心度が薄いかもしれない。このまま有効な打開策を見出せなければ、日本代表活動とJリーグの格差は、ますます広がってしまう可能性がある。 文●加部究(スポーツライター)