【石破内閣発足】指導力発揮できるか(10月2日)
石破茂内閣は、多難な先行きを伴いながら始動した。閣僚人事を巡る摩擦が取り沙汰される中、指導力を発揮して政治への不信感、閉塞[へいそく]感を打破できるのか。国民生活に真摯[しんし]に向き合い、有言実行の政治を進め切れるのか。動向を見極めねばならない。 閣僚は党役員人事と同様、総裁選での自陣と、決選投票で勝利に貢献した陣営からの登用が目立つとされる。首相経験者ら党重鎮の影響力に期待する色も濃いなら、政権運営は忖度[そんたく]が働き、制約されかねない。政治改革への発言は、変遷も指摘されている。 政策活動費の廃止といった政治改革は、党内の異論を収める胆力と求心力が必要だ。実効性が問われる改正政治資金規正法は、修正すべきは果断に修正する。支持率が急落した前政権を教訓に、民意にしっかりと目を向ける姿勢に転じなければ、首相が交代した意味はない。 旧安倍派は一人も入閣せず、不満や反発もあるようだ。派閥の裏金事件の結果責任に照らした判断ならば、世論の感覚も踏まえて受け入れるべきではないか。
総裁選で対決した有力議員が党役員就任を固辞した事態も伝わる。結束して心機一転を期すべき党勢下、対立を深めるようでは、政権や党の立て直しも、国民の信頼回復も遠のくだけだろう。 臨時国会の日程を巡り、与党が9日までの会期を提示したのに対し、野党側は審議が不十分だと反発した。石破氏は衆院解散・総選挙に先立ち、新政権への審判を仰ぐ材料を予算委員会の審議などで十分に示すと述べてきた。国会論戦の幕を早々に引くような姿勢は「逃げず、正面から謙虚に」との政権方針とは裏腹に映る。 初入閣は13人に上る。刷新感に増して重視すべきは、資質と実行力であるはずだ。臨時国会を短時日で閉じるなら、選挙期間を含め、さまざまな機会に自ら臨み、政策を明らかにする必要がある。 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故関連の主要閣僚で、国土交通相は再任された一方、復興、環境、経済産業、農林水産相らは初入閣となった。被災地の現状と複雑、多様な復興の課題をしっかりと理解し、責任感と緊張感を持って職責を果たすよう求めたい。(五十嵐稔)