障害者雇用ゼロ企業は半数以上 富山県内で障害者雇用に力を入れる企業の取り組みは・・・
富山テレビ放送
6日は障害者の雇用について考えます。 障害者の雇用は、法律で(障害者雇用促進法)一定の規模以上の企業に義務づけられいます。 その割合「法定雇用率」は、4月に0.2ポイント引き上げられ、さらに再来年7月には2.7パーセントに上がることが決まっています。 従業員が40人以上の企業は障害者を1人以上、雇用しなければならないんですね。 県内では 去年6月時点で(法定2.3%)民間企業の実雇用率が2.32%と過去最高を更新し、法定雇用率を達成している企業の割合も55.6%と全国平均より高くなっています。 こうした中、障害者雇用に力を入れる県内企業を取材しました。 富山市の朝日印刷。 社員1800人余り(1873)障害者雇用率は3.54%と法定雇用率を上回っています。 この大企業で障害者雇用を担っているのは、5年前に設立された子会社、朝日印刷ビジネスサポートです。 障害者雇用に特化した「特例子会社」で一定の要件を満たすと親会社に雇用されているとみなされます。 「体調は?大丈夫?きょうも一日お願いします」 現在、25人の障害者が在籍。 出勤するとまず体調をチェックし、監督者と呼ばれる社員に報告します。 監督者は健康面のほか、業務の見守りやサポートなどにあたります。 朝礼を終えると、業務開始。 親会社の工場や社屋などで、様々な業務にあたります。 小泉涼さん(勤続3年)は重度の知的障害があり、以前は別の会社に勤めていました。 *小泉涼さん 「『こんなにきれいにしているんだね』って言ってほしくてがんばってるんです。(仕事は)とっても楽しいです」 *リポーター 「どんなところが?」 *小泉さん 「仲間がいるから。同級生の方もいるし、本当に大好きです。楽しいです」 朝日印刷ビジネスサポート・管理本部長の朝日利美さんです。 会社では、障害のある従業員にどのような仕事をしてもらうか、試行錯誤してきました。 *朝日印刷ビジネスサポート 朝日利美 管理本部長 「一人採用するから一人分仕事を取ろうとすると難しいけど、30分の仕事が5個あったら大きな仕事になるとか、通常の人(健常者)が30分1時間で終わる仕事を倍かかるかもしれないけど、二人でやればできる」 親会社の業務のうち、手間のかかる作業などを30分~1時間ほどの単位で集めれば、一日の仕事になります。 知的、身体など、障害の特性に合わせ、業務の組み立ても柔軟にできます。 次第に親会社からの依頼も舞い込むようになり、現在、朝日印刷ビジネスサポートの業務は30種類にも及びます。 中には、ほぼ障害のある従業員だけで進めている仕事もあります。 ここは、紙をリサイクルする部屋。 親会社から古い紙を回収し、分別して機械にかけ、再生紙を作っています。 *朝日印刷ビジネスサポート 朝日利美管理本部長 「このコピー用紙を彼らがこのように自分たちで梱包して受発注システムを自分たちでパソコンで(作った)」 *喜中信次リーダー 「他の人にも伝えやすいようにマニュアルを作りました」 知的障害と持病がある喜中信次さんは、リーダーを任されています。 *喜中信次リーダー 「エクセルの表を作るのにどう作ればいいのかお手上げだったんですけど、周りの監督者などにいろいろ教えてもらいながら、今ではやっと一人でできるようになってきた」 「これからの目標は、今は自分がリーダーになっているけど、他の方々の能力を生かして、自分以外の人にリーダーになってもらえればいい」 彼らが生き生きと働くために欠かせないのが監督者である社員のサポートです。 全員が、働く障害者の支援に関する資格を取得していて、(障害者職業生活相談員:障害者を5名以上雇用する事業所に選任義務)週に2回、業務の進め方や気になることを話し合います。 この会社では社内の体制を強化していますが、障害者の雇用には、外部にもさまざまな支援体制があります。 *朝日印刷ビジネスサポート 朝日利美管理本部長 「できないと最初から決めつけてしまうと何もできないので、『やってみたら実はこんなこともできた』と(仕事が)広がる」 親会社の役員は障害者雇用は、経営戦略のひとつでもあると捉えています。 *朝日印刷 佐藤 常務取締役 「普通の会社でもなかなか人を採用するのに厳しい中で、印刷業はもっと厳しくなってきている現状。特例子会社の人たちが、我々と一緒に働いてくれるっていうのは本当に力になるし、今後も期待している」 *リポーター 「障がいのあるスタッフは戦力になる?」 *朝日印刷 佐藤 常務取締役 「もちろんです。非常に大きな戦力だと思っている」 冒頭にお伝えした通り、法定雇用率を達成している県内の企業は5割を超えていますが、裏を返せば、4割超はいまだ未達成です。 富山労働局によりますと、 このうち一人も雇用していない、いわゆる雇用ゼロ企業が半数以上を占めています。 障害者雇用に詳しい専門家はこの理由について「最初の一人」のハードルが高いと分析します。 *法政大学現代福祉学部 眞保智子教授 「まず一人を雇用するということがハードルが高いということは実際データにも表れている。ハローワーク、あるいは特別支援学校、専門の機関がさままな支援策を打ち出して、まず最初の一人の雇用にチャレンジしていただくということをしている。特に中小企業が雇用する場合は「戦力になるから雇用する」障害者の雇用を(満たす)ために雇用するのではなくて、戦力になるから雇用するその戦力にするまでには、支援機関あるいはジョブコーチなどの公的な支援があるので、企業だけで悩んで何とかしなくていい。まず実習から引き受けていただければ」 眞保教授によりますと法定雇用率が今後も拡大していく中、対応を迫られるのは主に中小企業。 ゼロ企業は、まず実習の受け入れから。そして数を満たすだけではなく戦力として雇用することが大切、と話していました。
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