「AIの影響ではない」先輩棋士が力説する“藤井将棋”の魅力 藤井聡太王位が幼少期に身に着けた根気強さ「反復練習の必要性を盤上で表現している」
将棋の藤井聡太王位(竜王、名人、王座、棋王、王将、棋聖、22)が、8月19・20の両日に行われた伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦七番勝負第4局で、挑戦者の渡辺明九段(40)に勝利。防衛5連覇と「永世王位」資格獲得に王手をかけた。ABEMAの中継には、王位3期の深浦康市九段(52)が出演。“藤井将棋”の魅力について、「AIの影響ではない」と力説した。 【映像】藤井王位が勝利を飾った瞬間の表情 防衛5連覇で自身2つ目の永世位獲得を目指す藤井王位に、タイトル31期を誇る最強挑戦者・渡辺九段が挑戦している注目のシリーズ。“真夏の七番勝負”は折り返し地点を迎え、どちらがリードを奪うかに大きな注目を集めている。残暑の佐賀県唐津市を舞台に争われた第4局では、先手番の渡辺九段が矢倉を志向。作戦巧者の意表の戦型選択だったが、若き絶対王者も負けじと急戦含みの進行から矢倉中飛車に構えて対抗した。 渡辺九段にとっては過去に経験のある将棋となったものの、「序盤の早いところでまずくしてしまった」。その言葉通り、藤井王位が別の道を示唆し踏み込みを決断した1日目の午後には、持ち時間のうち2時間37分を投じる大長考に沈むこととなった。挑戦者の思考は、角を逃げた後の選択。「その後の方針が決まらず、封じ手にしてその後を考えようと思っていた。流れとしては攻めていかないとおかしいが、どれも成算が持てなかった。本譜は撤退する順でしたが、あまり変わらなかったかなという印象」。封じ手開封から始まった2日目は、渡辺九段の苦しい表情が目立つようになっていた。 わずかなほころびながら、藤井王位がそれを見逃すことはない。すかさず猛攻を仕掛けると、瞬く間に自身のペースに引き込みリードを拡大させていった。防戦一方となった渡辺九段も必死の抵抗から勝負手を繰り出したが、そのどれもが逆転に繋がる反撃には至らず。藤井王位が的確な攻めの手筋から寄せ切り、100手で勝利を飾った。 本局の解説を務めた王位3期の深浦九段は、「藤井王位にミスというものが全くなく、完璧な内容でしっかり後手番をブレイクした。強い将棋だった」と称賛。見る者の胸を躍らせる完勝だったことを伝えた。 藤井王位は将棋の研究にAIを活用していることが知られているが、深浦九段は「藤井王位の勝ち方というのは、AIの影響ではない。小さい頃から詰将棋を何局も何局も解き身に着けた根気強さによって支えられている」と力説。「難しい詰将棋にどんなに時間がかかっても、根気強く正解に導くことを小さい頃からやってきたことで、勝つために必要な根気が養われた。そういうことが勝利という形に現れていると思う」と語った。さらに、「野球の一流選手に例えても、イチロー選手なども毎日丁寧に素振りなどの練習をしていた姿が映像にも残っている。そういった丁寧さや反復の必要性を、将棋界では藤井さんが盤面に現してくれている」と加えていた。 実際に藤井王位との対戦経験を持つ深浦九段の考察に、ファンも納得。「やっぱり原点は詰将棋力だよね」「その才能にAIがプラスされた形なんだろうな」「ずば抜けてるもんね」「継続は力なり」「好きでたまらんのだろうなあ将棋」と多くの反響が寄せられることとなった。 この勝利で、シリーズ成績は藤井王位の3勝1敗に。待望の防衛5連覇まであと1勝まで迫っている。注目の第5局は8月27・28日、兵庫県神戸市の「中の坊瑞苑」で予定。藤井王位は「しっかり対局に向けて状態を整えていきたい」と語り、冷静に次戦を見据えていた。 (ABEMA/将棋チャンネルより)
ABEMA TIMES編集部