【イマドキの大学ゼミ】「ステマ」問題どう考える? 会社経営の教授から学ぶビジネス力
「相手のことを考える」姿勢
活動が始まって2カ月経ったころから、ゼミ生たちの意識や行動に変化が出てきました。相手の気持ちを考えることができるようになったのです。明田さんは、次のように話します。 「私たち10期生は一人ひとりの主張が強くて、初めは話し合いをしてもまとまりませんでした。そんなとき、先生はよく『自分たちがどう思うかではなく、相手がどう思うかを考えなさい』と声をかけてくれました。今は、それぞれの意見があることを意識し、耳を傾けるようになりました。他の人の意見を受け入れたうえで、『それはいい意見だね。こうしたらもっと良くなるんじゃないか』などと前向きな話し合いができるようになりました」 渡部教授の教えは、さまざまな場面で生きています。役所や企業などにヒアリングを依頼するときは、先方の事情を考えて効率よく進められるように準備に力を入れたり、チームで集まるときに個人の都合は後回しにしたりと、メンバーそれぞれが相手の立場を考え、チームのために行動できるようになりつつあります。 また、プレゼン大会というゴールに間に合うように、逆算して活動予定を組まなければならないので、計画力も身についてきました。「社会に出れば当たり前のことが、意外に大変だと気づきました」と春原さんは言います。 今は、問題を解決するためのアイデアを出し始めているところです。明田さんはこう話します。 「企業やインフルエンサー側のステマの大きな問題は、消費者に『宣伝行為』だと気づかせないよう、だましている点です。その解決策として、企業やインフルエンサーを対象にしたセミナーを開催する案が出ています。一方の消費者側は、法の部分では規制されているものの、グレーゾーン(=抜け穴)があることが問題です。正しい判断ができるように、学生や一般消費者向けのセミナーも計画中です」 明田さんは消費者庁でインタビューした際に言われた「ステマは研究や対策が進んでいない未知の部分が多い。自分たちのような行政にはできない、あなたたちだからこそできる対策もあると思う」という言葉が心に残っています。「この秋には消費者庁など関係省庁に私たちなりの意見書を提出する予定です。そして集大成となる11月のプレゼン大会では、自分たちが納得できるような結果を残したいと考えています」