AI株を買う理由は配当とバリュエーション-ジュピターのアジア戦略
(ブルームバーグ): 人工知能(AI)関連株の過熱感を懸念するアジアの投資家に対し、あるファンドマネジャーはAI関連株を買い続ける意外な理由を提案している。
ジュピター・アジア・インカム戦略の共同運用者、サム・コンラッド氏はインタビューで「アジアで保有しているハイテク企業はすべてネットキャッシュのバランスシートを持っており現在配当金を支払っている。今後数年に利益拡大に伴い配当を増やすと見込んでいる」と説明。対照的に、米国の同業他社は「配当金支払いに重点を置いていない」と指摘した。
インカムファンドは、銀行や公益事業のような安定配当の低リスク銘柄に投資することで知られているが、コンラッド氏によると同氏のファンドはテクノロジー銘柄の保有比率を過去最高の約32%まで引き上げ、現在では最大の配分となっている。アジア最大の半導体メーカーである台湾積体電路製造(TSMC)や韓国のサムスン電子はコンラッド氏の最大の投資先。
AIブームがこの地域のハイテク株上昇の原動力となったが、エヌビディアのような米国の同業他社の大幅上昇には大きく後れをとっている。そのため、株価は比較的割安に推移しており、多くの銘柄を過去最高水準に押し上げたモメンタムトレードに終止符を打とうという投資家はほとんどいないようだ。
「私たちが保有するアジアのハイテク株のバリュエーションは、米国のハイテク株や歴史的な水準と比較しても非常に魅力的だ」とコンラッド氏は言う。20億ドル(約3000億円)のジュピター・アジア・インカム戦略の過去5年間の成績は同種ファンドの97%を上回っている。
TSMCは来年の推定利益の約19倍で取引されており、過去5年の平均と変わっていない。2月現在コンラッド氏のポートフォリオで最大の保有銘柄である聯発科技(メディアテック)の2024年度の配当利回りは推計5.2%だがエヌビディアは0.02%。
コンラッド氏は、技術や能力の面で米国の同業他社をしのぐ「グローバル・リーダー」を求めている。「キラーアプリやキラー製品、キラーサービスを開発するのがどの米巨大テック企業かはわからないが、それは問題ではない」と同氏は話す。どの企業であっても、半導体製造やAIデータサーバーの管理と製造、メモリー調達で「われわれが保有するアジア企業に頼らざるを得ないからだ」と説明した。