勤勉なブリヤート族の女性。成績優秀で中学時代に北朝鮮へ行った経験も
日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。その北に面し、同じモンゴル民族でつくるモンゴル国が独立国家であるのに対し、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれ、近年目覚ましい経済発展を遂げています。しかし、その一方で、遊牧民としての生活や独自の文化、風土が失われてきているといいます。 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録しようとシャッターを切り続けています。内モンゴルはどんなところで、どんな変化が起こっているのでしょうか。 アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。
フルンボイル草原のブリヤート族、スレンジャッブさんの奥さんの名前はナンスラマという。彼女は中国語の読み書きもできる学のある人だ。おしゃべりが好きで、いつもブリヤートのことや自分たちの生活などについて教えてくれた。中学生の時には成績優秀で、夏のキャンプに北朝鮮へ招待された経験もある。その時の写真をみて本当に驚いた。 彼女も夫に負けずとても勤勉な人だった。ある日の朝5時過ぎに目覚めると、外は大雨だった。起きるかどうか決心がつかないまま、窓から外を覗いてみると、彼女はすでに牛の乳搾りをしていた。慌てて起き上がり、カメラを持って雨の中を走ったが、着く頃には残念ながらすでに雨の中での乳搾りを終えていた。 現在、搾った乳は、自分たちのための乳製品に使うだけだという。彼女の母が若かった頃には、乳を買い取る業者がいて、毎日、牛乳を売って現金収入を得ていた。しかし、現在は回収業者がおらず、乳搾りを行う家庭も少なくなっているらしい。(つづく) ※この記事は「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第14回」の一部を抜粋しました。
---------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。