もうすぐ賃金上昇に向かう?「最低賃金1,500円」の生み出す効果とは
本来、賃金というのは企業が自発的に上げていくもの
日本企業の生産性は諸外国と比べると著しく低く、同じ仕事をしていても、日本企業で働く従業員は米国やドイツなど諸外国と比較して半分から3分の2程度の賃金しかもらえない。これは経済学的に見て異常な事態であり、これを異常と感じなくなっている現状こそが大きな問題と言える。 本来、企業というのは自ら新陳代謝を行い、先行投資を通じて将来の付加価値の源泉を作っていくのが本来の姿である。賃金についても優秀な人材を獲得するためには、率先した賃上げが必須であり、自然と賃金は上がっていくものである。 たとえばドイツでは、つい最近まで最低賃金というものが存在していなかったが、企業が自ら賃上げすることで、日本よりも圧倒的な高賃金を実現できている。残念なことに日本企業は、いわゆる企業家精神(アントレプレナーシップ)を失った状態となっており、前例踏襲に終始し、経営が硬直化した状態に陥っている。 資本主義社会において、政府は過度に企業活動に口出しすべきではないものの、ここまで企業が機能不全を起こしている以上、外部からの圧力が必要であることは明らかと言えるだろう。加えて日本の場合、アベノミクスによる低金利政策が長く続いたことから、企業は金利負担なしで資金をいくらでも借りられる状況となっていた。 つまり、日本企業の多くは慢性的な低賃金とゼロ金利という二重の下駄を履かせられて、何とか利益を維持してきただけであり、これは持続不可能な仕組みと言える。 このタイミングで最低賃金が1,500円に引き上げられれば、労働コストに加えて金利コストも加わることから、十分な付加価値を生み出せていない企業の経営は困難になる。日本ではこれまで、企業経営が悪化すると労働者にシワ寄せが行くので、企業を救済すべきという考え方が主流となっていた。だが、この価値観は資本主義の原理原則に照らした場合、むしろ逆の概念と言える。