サステナブル燃料で鈴鹿8耐完走! スズキが挑んだ脱炭素レースの舞台裏
――このプロジェクトを取り仕切ったのは? 青木 スズキの佐原伸一氏です。アオキはレース後に佐原氏を直撃し、レースを走ったマシンも間近でチェック! ――佐原氏とはどんな話を? 青木 実はすでにスズキの社内でレース部門は解散しているので、チームの運営スタッフを社内公募したそうです。佐原氏いわく、「四輪やマリン、生産技術や管理部門などから100人近い応募があり、気がついたら社を挙げた取り組みになっていた」とのこと。 最終的にチームは総勢30人に。MotoGPなどの経験があるスタッフをピットに配置し、ヘルパーなどを社内公募から採用した人たちにやってもらったそうです。 ――文字どおりスズキは一丸となって8耐に挑んだと。 青木 佐原氏は「レースは技術開発の場であり、長丁場の耐久レースは人材育成の格好の場所でもあり、培った技術やノウハウを二輪だけじゃなく、四輪やマリンなどスズキが持つすべての製品へフィードバックできます」と語っていました。 ――サステナブル燃料とガソリンの大きな違いは? 青木 燃費です。佐原氏いわく、「燃費感覚としては半周くらいの差があり、通常なら27周でピットインするところ、26周以下で給油しなければなりません」とのこと。鈴鹿サーキットを1周すると5.8㎞ですから、その半分は2.9㎞ほど。わずかな差のようにも感じますが、レースでは非常にシビアな問題になる。 ただ、全日本ロードレースJSB1000では、100%非化石由来のバイオ燃料を使っていますが、エンジンオイルに燃料が希釈しやすく、「交換サイクルが早い」といった声を耳にします。 その点(希釈性について)、今回どうだったのか佐原氏にネチネチ聞くと、「8時間のレースでオイル交換は必要なかった」とのこと。濃度の違い、あるいはメーカーによる違いがあるのかはわかりませんが、CN燃料の可能性がまた証明されたので、今後ますます期待できます! ――佐原氏は8耐をどう総括されていました? 青木 佐原氏は「これでプロジェクトが終わったわけではなく、データを取ってサステナブルアイテムの検証をして次の目標へ」と前を向いていました。 ちなみに今回のレースでチェッカーフラッグが振られると、ピットに鈴木俊宏社長が姿を見せるあたりは、さすが熱きスズキ軍団! 鈴木社長は「やっとスタートできた。これからが大事だよ」と佐原氏に伝えたそうです。 実は昨年の株主総会で鈴木社長は、「レースに復活するのなら、しっかりと腹を据えてやることが重要」とも語っています。ズバリ、スズキのMotoGP復帰はありえるとアオキはみました! 取材・文/週プレ二輪班 撮影/夏目健司 写真提供/スズキ二輪